退職について、どうやって進めればいいのかわからない人も多いのではないでしょうか。
転職先が決まっている状態で退職の手続きを間違うと、転職先にも今の職場にも迷惑をかけるかもしれません。
余裕を持って退職を進めるために、「会社の辞め方5ステップ」と「退職時によくあるトラブル」について解説します。

引き継ぎや日程でトラブルが起きやすいため、退職の流れを事前に知っておくと失敗を防げます。
会社の辞め方5ステップ


退職までの手順を5ステップに絞りました。
ほとんどの会社では紹介する流れで退職できます。
【ステップ1】就業規則をチェックする


会社に対して退職の意志を伝える前に、就業規則を確認しないといけません。
就業規則には、申し出から退職までの期間が定められている場合があるからです。
たとえば就業規則に「1ヶ月以上前に退職を申し入れること」とあれば、従う必要があります。



民法で定められた「退職の申し出は2週間前まで」というルールと矛盾するのでは?
民法上は2週間前に申し出れば退職できますが、就業規則に従うべきです。
会社が就業規則で退職の申し出期間を設ける理由は、会社側も引き継ぎ等の準備期間を考慮しているから。
引き継ぎでトラブルを起こさないためにも、就業規則ベースで退職の計画を立ててください。
【ステップ2】上司に退職の意志を伝える


退職願を提出する前に、まずは上司へ退職の意志を伝えましょう。
このタイミングで引き継ぎのスケジュールや退職日の決定などをおこないます。
上司への相談なしに退職日を決めてしまうと、トラブルを引き起こす可能性が高いだけです。
引き止めに遭ったり、嫌味などを言われるかもしれないため、上司への相談は億劫かもしれません。
しかし、後のトラブルを避けて円満退職を実現するためにも、退職の意志を伝えるのはマストです。
【ステップ3】退職届けを提出する


上司と退職の意志を共有できたら、このタイミングで退職届を提出します。
『退職届』… 退職願が受理され正式に退職日が決まったあとに提出する書類
『退職願』… 退職の意志を伝える書類(口頭で伝えてもOK)
退職届けを提出したタイミングが『退職を申し出た日』となるので、退職予定日の2週間以上前に提出してください。
就業規則に退職の申し出の期間が規定されている場合は、就業規則を優先しましょう。
退職届けの書き方については、会社規定の退職届があればフォーマットに従って作成してください。
規定の退職届がない場合は、転職エージェントのdodaが公開している退職届の書き方を参考に作成しましょう。
【ステップ4】業務の引き継ぎ
正式に退職を届け出たら、業務の引き継ぎをおこないます。
上司からの指示に従い、後釜の担当者へ引き継ぎを進めてください。
引き継ぎ内容にもよりますが、どれくらいの期間が必要なのかを事前に見積もっておかないといけません。
退職日の1ヶ月前から引き継ぎをした場合、有給の消化を考慮すると数日しか引き継ぎ期間がないこともあります。


たとえば、1/31を退職日に設定し1/1に退職届を提出した場合、有給休暇を20日取得すると最終出勤日は1/11です。
土日の休みを入れると引き継ぎ期間はたったの8日しかなく、十分な引き継ぎができるかは疑問が残ります。
業務の引き継ぎはトラブルが起きやすいため、日程のすり合わせは抜かりなく調整しておきましょう。
【ステップ5】退職


待ちにまった退職日です。
めんどくさいかもしれませんが、退職のあいさつ回りは必ずしておきましょう。
手土産(個包装のお菓子)を配布すると、最後まで印象が良いまま退職できます。
さらに一人ひとりにお世話になったことをしっかりと伝えておけば、円満退職の手順としては十分です。
最後に、社服、備品は会社へすべて返却し、忘れ物が無いようチェックしましょう。
退職後に返却忘れ、忘れ物が発覚すると手続きがめんどうなので注意してください。
同業他社への転職なら円満退職が鉄則


現職と同じ電気制御系の仕事へ転職する場合は、円満退職が鉄則です。
本記事での円満退職とは、同僚へ悪印象を与えない退職を指します。
会社側の都合が良いように辞めることではない、という点を理解しておいてください。
電気制御業界はおろか製造業の世界は狭いため、のちのち問題を抱えることになります。
現場で同僚に出会ったら気まずい
メンタル的な問題として挙げられるのが、前職の同僚と現場で出会ったら気まずいということ。
関係が良くないまま辞めた場合、冷めた目で見られるだけでなく、転職先の同僚に告げ口されるリスクもあります。
告げ口をされてしまうと、転職先の同僚とも関係が悪くなるかもしれません。
電気制御系の世界はせまいため、同業他社へ転職していった同僚とも客先の工場で鉢合わせることも多いです。
お互い仕事で来ているため逃げ出せず、仕事中はずっと気まずい思いをすることになります。
同業他社に悪評が伝わって転職が不利になる可能性がある
ろくな辞め方をしなかった人の情報は、同業他社に伝わっているかもしれません。
このような悪評は、同僚が取引先や外注業者に話すことで伝わっていきます。
取引先から別の取引先へ話が広がっていくため、最後には同業他社へ悪評が届きます。
こうなってしまうと同業他社への転職が難しくなり、電気制御の仕事をあきらめないといけません。
とくに転職先が決まっていない状況からの退職においては、同僚からの印象を損なわないよう注意してください。
不仲や会社側に問題がある場合の退職なら円満退職は不要です
ただしパワハラや給料支払い遅延など、会社側に問題がある場合において円満退職は不要です。
上司や同僚と不仲が原因の退職も、無理して円満退職を目指す必要はありません。
円満退職のメリットよりも、自身のメンタルや生活を守ることを優先してください。
退職時のよくあるトラブルに対するQ&A


退職時によく起きがちなトラブルを4つ紹介します。



その他事例は、厚生労働省が公開している退職時の労使トラブル事例から確認できます。
退職の引き止めは条件が良ければ受けるべき?
会社からの引き止めは、どんな条件であっても受けるべきではありません。
約束した条件を必ず履行してくれる確証がないからです。
口頭での口約束は反故にされやすく、書類に証拠を残しても守ってくれるとは限りません。
「約束を破っても訴えられることはない」と会社側も予想しているからです。
甘い条件に惑わされず、退職の意志を貫き通しましょう。
退職したいのに辞めさせてもらえない
上司に退職を伝えても辞めさせてもらえない、といったケースが多々あるようです。
退職には会社と労働者に退職の合意が必要なので、退職届を受理させなければいけません。
退職届を受理させる方法は2つあります。
- 弁護士に相談する
- 内容証明郵便で退職届を郵送する
弁護士に相談するのはハードルが高いため、『内容証明郵便で退職届を郵送する』方法が一般的です。
内容証明郵便で退職届を送り会社側が受け取ると、退職届を強制的に受理させられます。
内容証明郵便とは
いつ、いかなる内容の文書を誰から誰あてに差し出されたかということを、差出人が作成した謄本によって当社が証明する制度です。
引用元:内容証明|日本郵政株式会社
文書の内容、受け取り記録を日本郵政が証明してくれるため、会社側は言い逃れ不可能です。
退職届を受け取ったが最後、民法第627条第1項の「退職する自由」に則り、退職の意向が成立します。
同業種への転職を認めないと言われた
競業避止義務契約を悪用した、転職先が制限されるパターンです。
競業避止義務とは
同業他社への就業・転職は、在職中は労働契約それ自体により、退職後は、在職中の労働契約における又は退職時等の特約により制約される。
引用元:独立行政法人労働政策研究・研修機構|同業他社への就業・転職の制限
「同業他社への転職は禁止」と言われたら、まずは就業規則を確認しましょう。
会社側の主張と就業規則の内容に相違があれば、従う必要はありません。
退職時に競業避止義務契約への合意を求められることもありますが、拒否できます。
合意する場合は、制約を受け入れるかわりに代替措置を求めるのも一つの手です。
- 職業選択の自由を不当に拘束しない範囲に訂正させる
- 退職金を上乗せしてもらう
- 自己都合退職から会社都合退職へ変更してもらう
転職先が会社にバレている場合は、より競業避止義務を盾に制約を迫られる場合があります。
たとえば退職金を減額されたり、転職先への入職を禁止するなどです。
転職先を伝えるとトラブルが起きやすいため、転職先を会社に伝えないことをオススメします。
有給休暇を消化させてもらえない
有給休暇が残っているにもかかわらず、「退職時は有給消化できないと言われた」というケースも多いです。
会社側の言い分は違法であり、有給消化できないということはありません。
労働基準法第39条には「有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない」とあるからです。
しかし、会社から有給休暇を拒否されたら難しいといわざるを得ません。
時季変更権を盾に、会社側も正当性を主張し譲らないからです。
裁判を起こせば勝てるかもしれませんが、わずかな休日のために失うものが多すぎるためおすすめしません。
有給休暇の取得はあきらめて、次の会社へ気持ちを切り替えたほうが建設的です。
退職でトラブルになったときは労働局を頼ろう


退職でトラブルになったさいは、労働基準監督署ではなく都道府県労働局を頼りましょう。
都道府県労働局は、会社と労働者の紛争を解決する役割を持っている行政機関です。
労使トラブルに関する助言や指導、あっせんを受けられます。
各都道府県の労働局一覧ページから、ご自身の居住地に合わせた労働局へ相談してください。