【レベル1-5】電線管と電線を選定する|設計しながら学ぶ電気制御設計講座

ここでは、制御盤から汲み上げポンプの電動機までを接続する電線と電線管を選定します。

電線を電線管に通す場合、電流減少係数が大きくなります。

そのため、制御盤内と同じ電線太さでは許容電流が足りず、焼損に繋がる可能性も。

電線管に通す場合の許容電流を改めて計算し、適切な電線を選定しないといけません。

目次
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主回路用電線の選定

電線の選定条件は以下のとおりです。

電圧AC200V
想定電流85.6A
環境温度35℃
通線本数4本(U,V,W,E)

以上の条件より、以下の手順で電線太さを計算します。

主回路用の外部電線の選定手順
  • 電線の種類を選択する
  • 電流減少係数を算出する
  • 想定電流と減少係数から必要許容電流を算出する
  • 電線の太さを決定する

①電線の種類を選択する

名称定格電圧許容温度断面積特徴
KIV600V60℃0.75~250耐油性、耐水性、可とう性(柔軟性)に優れる。大型電気機器の配線に使用される。
VSF300V60℃0.5~2耐水性、可とう性(柔軟性)に優れる。小型電気機器の配線に使用される。
KV100V60℃0.3~2可とう性(柔軟性)に優れる。100V以下の信号用配線に使用される。
HIV600V75℃0.75~250耐油性、耐水性に優れ、許容温度が高いため環境温度が高い場所に使用する。

上記の表より、候補はKIVもしくはHIVの2択。

環境温度が最大35℃なので、HIVほど許容温度は不要です。

なのでコスト面と可とう性の良さからKIVを使うのがベストだといえます。

②電流減少係数を算出する

今回の条件における電流減少係数は以下のとおりです。

項目条件減少係数
環境温度35℃0.91
通線本数4本0.63

以上の2点から、電流減少係数は以下の計算式で求められます。

電流減少係数の計算式

電流減少係数[A] = 温度係数 × 通線本数係数

0.573 ≒ 0.91 × 0.63

以上の結果より、電線の電流減少係数は0.573であることがわかりました。

③必要許容電流を計算する

想定消費電流が85.6Aなので、電線に必要な許容電流は以下計算式で表せます。

必要許容電流の計算式

必要許容電流[A] = 消費電流[A] ÷ 電流減少係数

149.4 ≒ 85.6 ÷ 0.573

これらの計算結果より、外部の主回路電線には149.4A以上の許容電流が必要であることがわかりました。

④電線の太さを決定する

KIV電線の許容電流一覧表から、許容電流が149.4Aを越える最小の電線を選択します。

IV・KIV・HKIV電線の許容電流一覧

電線の断面積[sq]許容電流[A]
1.25sq19A
2sq27A
3.5sq37A
5.5sq49A
8sq61A
14sq88A
22sq115A
38sq162A
60sq217A
100sq298A
150sq395A
200sq469A
※電流減少係数1.00の場合における許容電流一覧

これを超える最小の電線太さは38sqです。

なので制御盤から汲み上げポンプまでの主回路用外部電線は『KIV38sq』となります。

接地用電線の選定

外部配線用の接地電線は、負荷直前のブレーカーをもとに決定します。

【レベル1-4】接地(アース)線を選定するで選定したKIV8sqの電線が、外部配線の接地線です。

電線管とノックアウト接続用コネクタの選定

電線管の内径は、通線する電線の仕上がり外径と敷設環境により求められます。

電線管の敷設環境
  • 電線管の長さは約5m程度
  • 敷設ルートに90°の屈曲が2回あり
  • 高い防水、耐油性が必要
  • 通線本数は4本(KIV38sq×3本、KIV8sq×1本)
  • 両端はノックアウト接続

以上の条件を元に、以下の手順で電線管を選定していきます。

電線管とノックアウト接続用コネクタの選定手順
  1. 電線の総断面積を算出する
  2. 電線の総断面積から電線管の必要最低内断面積を算出する
  3. 必要最低内径より大きい最小の電線管を選定する
  4. 電線管のノックアウトコネクタを選定する

①電線の総断面積を算出する

今回通線する電線は『KIV38sq』が3本、『KIV8sq』が1本の合計4本。

電線の仕上がり外径から、各々の断面積を計算します。

電線仕上がり外径断面積
KIV8sq6.1mm29.22m㎡
KIV38sq13.0mm132.73m㎡

仕上がり外径は、KANZACC KIV 電気機器用ビニル絶縁電線の仕様から引用

内線規定3110-8より、8sqの電線には×1.2倍の補正係数を与えます。38sqは×1倍です。

電線補正係数補正後断面積
KIV8sq1.235.06m㎡
KIV38sq1.0132.73m㎡

以上の結果より、電線の総断面積は以下の計算で求められます。

仕上がり外径の総和の計算式

総断面積[m㎡] = (KIV8sq断面積 × 1) + (KIV38sq断面積 × 3)

433.25 = (35.06 × 1) + (132.73 × 3)

以上の計算結果より、電線の総断面積は433.25m㎡であることがわかりました。

②電線の総断面積から電線管の必要最低内断面積を算出する

電線管の敷設環境をおさらいします。

電線管に求める条件
  • 電線管の長さは約5m程度
  • 敷設ルートに90°の屈曲が2回あり
  • 高い防水、耐油性が必要

挿入する電線の総断面積は、電線管の内径断面積の32%以下もしくは48%以下と定められています。

電線管の距離が短く曲がりがない場合、48%まで許容可。

しかし今回は『敷設ルートに90°の屈曲が2回あり』ということで、32%以下になるよう選定しないといけません。

なので電線管の必要最低内断面積は以下の計算式で求められます。

電線管の必要最低内断面積の計算式

電線管の内断面積[m㎡] = 電線の総断面積[m㎡] ÷ 0.32

1354 = 433.25 ÷ 0.32

以上の結果をもとに、電線管の必要最低内径を算出します。

電線管の必要最低内径の計算式

電線管の内径[mm] = √(電線管の内断面積[m㎡] ÷ 3.14) × 2

41.53 = √(1354 ÷ 3.14) × 2

よって、電線管の内径は41.53mm以上が必要であることがわかりました。

③必要最低内径より大きい最小の電線管を選定する

電線管に必要な内径がわかったら、電線管の種類とサイズを選定していきます。

まずは電線管に求められる条件をおさらいしましょう。

電線管に求める条件
  • 電線管の長さは約5m程度
  • 敷設ルートに90°の屈曲が2回あり
  • 高い防水、耐油性が必要

電線管に求められる性能は『可とう性』『防水性』『耐油性』です。

これを満たすのがフレキシブル電線管。

鋼鉄製の可とう電線管にビニル被膜を施しており、屋内・屋外問わず様々な環境で使用できる電線管です。

ここでは、工作機械等でよく使用される三桂製作所のケイフレックスシリーズをもとに選定を進めていきます。

品番最小内径(mm)
KMS1010.0
KMS1212.3
KMS1615.8
KMS2220.8
KMS2826.4
KMS3635.0
KMS4240.0
KMS5451.3
KMS7063.0
KMS8278.0
引用元:ケイフレックス|三桂製作所

電線管の必要最低内径が41.53mmなので、フレキシブル電線管の品番は『KMS54』となります。

④電線管のノックアウトコネクタを選定する

ノックアウト接続用コネクタとは、電線管接続用の打ち抜き孔のこと。

電線管だけでは、制御盤や電動機の端子箱に接続できません。

ノックアウト接続用コネクタが必要です。

品番接続可能な品番接続ねじ呼びねじ外径
KMBG10KMS10G1/220.9
KMBG12KMS12G1/220.9
KMBG16KMS16G1/220.9
KMBG22KMS22G3/426.4
KMBG28KMS28G133.2
KMBG36KMS36G1-1/441.9
KMBG42KMS42G1-1/247.8
KMBG54KMS54G259.6
KMBG70KMS70CTG7075.1
KMBG82KMS82CTG8287.8
引用元:ノックアウト接続用管用平行ねじ付きコネクタ|三桂製作所

以上の表より、KMS54に適切なノックアウト接続用コネクタは『KMBG54』であることがわかりました。

外部配線の電線管はKMS54、電線は38sq×3と8sq×1が答え

外部配線用の電線管と電線を割り出した結果は以下のとおりです。

外部配線用の電線管と電線の選定結果
  • 電線太さ ⇒ 38sq×3、8sq×1
  • 電線種類 ⇒ KIV電線
  • 電線管の種類 ⇒ フレキシブル電線管
  • 電線管の品番 ⇒ KMS54
  • ノックアウト接続用コネクタ ⇒ KMBG54

これらの結果より、外部配線に必要な部品は以下のとおりとなりました。

部品名称型式
外部配線電線管KMS54
ノックアウト接続用コネクタKMBG54
外部主回路電線KIV38sq
外部接地電線KIV8sq

【レベル1-6】端子台を選定する

次は制御盤内の配線と外部配線を中継する端子台を選定します。

⇒ 【レベル1-6】中継用の端子台を選定する

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