【レベル3-1】給水タンクが空になったらポンプを停止する|設計しながら学ぶ電気制御設計講座

レベル3-1では、給水タンクの水量が下限となったとき汲み上げポンプを停止させる回路を追加します。

汲み上げポンプのようなポンプ機器は、基本的に水なしでの空運転をしてはいけません。

よって給水タンク内の水量を逐次チェックしながら、汲み上げポンプの制御をおこないます。

目次
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汲み上げポンプ用給水タンクの概要

給水タンクにはフロート式の液面計を追加し、タンク内の水量をチェックします。

今回は給水タンク内の水が下限状態を取得できればOKです。

なので、下限検知用の近接センサーを1つ設置します。

近接センサーとは?

引用元:オムロン E2E型近接センサー

近接センサーは、非接触で物体の検出が可能です。

可動部を持たないため、水・油・粉塵等の多い悪環境下でも安定した検出が得意

また物理的な接点がないことで接点摩耗がないため、長寿命でもあります。

今回は水気の多いタンク上へ設置するため、近接センサーを液面の下限検知に採用しました。

近接センサーの線数と出力形態

今回使用する近接センサーは3線式です。

2線式もありますが、残留電圧による誤検知の少ない3線式がよく使われます。

機器符号シンボル
PXS
ノーマル・オープン(N.O)

ノーマル・クローズ(N.C)

3線式を使用する場合、NPN/PNPを考慮してセンサーの型式を決めないといけません。

NPN/PNPについて詳しく知りたい人はコチラ

オムロン製のE2E近接センサーでは、NPNおよびPNP接続方法は下記のとおりとなります。

PNPノーマルオープン
(物体検知でON)
ノーマルクローズ
(物体検知でOFF)
NPNノーマルオープン
(物体検知でON)
ノーマルクローズ
(物体検知でOFF)
画像引用元:オムロン 近接センサーE2E NEXTシリーズカタログ

NPNとPNP出力の違いは、負荷と電源の接続先ですね。

NPNだと負荷は24V側と常時接続されており、近接センサーは物体検出時に0Vを出力します。

PNPだと負荷は0Vと常時接続されており、近接センサーは物体検出時に24Vを出力します。

NPN回路でPNP出力の近接センサーを接続しても動作しません。逆も同じです。

選定でミスしてしまうと無駄な買い物になってしまうため、事前に出力形態はチェックしておきましょう。

下限検知にノーマルクローズ(N.C)の近接センサーを使用する理由

近接センサーには2種類の出力形態が存在します。

  • ノーマルオープン(N.O)
    • 通常時に回路が開いているセンサ。検知物体が接近すると回路を閉じるため導通する
  • ノーマルクローズ(N.C)
    • 通常時は回路が閉じているセンサ。検出物体が接近すると回路を開くため導通が切れる

給水タンクの下限検知に近接センサーを使用する場合、ノーマルクローズ(N.C)を使用しましょう。

センサーの電線が断線したときに安全側へ動作させたいからです。

その理由について、各出力形態を使用した場合の動作を確認してみましょう。

ノーマルオープンを使用した場合…

センサー状態フロート位置信号入力ポンプ運転可否
正常下限オン○不可能
下限以外オフ○可能
断線下限オフ✕可能
下限以外オフ○可能
ノーマルオープン時の運転パターン

センサーをノーマルオープンにした場合、断線時にフロートが下限にあってもセンサーから応答ありません。

給水タンクの水位が下限にはないと勘違いし、水がないにもかかわらず汲み上げポンプを運転できてしまいます

これではインターロックとして成立しないため不適切です。

ノーマルクローズを使用した場合…

センサー状態フロート位置信号入力ポンプ運転可否
正常下限オフ○不可能
下限以外オン○可能
断線下限オフ○不可能
下限以外オフ○不可能
ノーマルクローズ時の運転パターン

センサーをノーマルクローズにした場合、どのパターンにおいても安全側へ動作することがわかります。

断線すると水位がどの位置でも下限だと設備が認識するため、ポンプを運転できません。

よってポンプが空運転することはなくなります。

このように断線した場合に安全へ動作するよう、センサーの出力形態を選定するクセをつけておきましょう

制御回路の設計

ここからは、レベル2で設計した回路に給水タンクの下限でポンプ運転を停止する仕様を追加します。

まずはレベル2で作成した回路を再度確認してみましょう。

レベル2で設計した汲み上げポンプ運転回路

⇒レベル2で作成した回路の復習はコチラ

給水タンクの下限インターロックを追加する

レベル2の回路に給水タンクの下限でポンプを停止するインターロックを追加します。

まずは完成図を見てみましょう。

もともとの回路と異なる点は赤い部分です。

汲み上げポンプ運転インターロック回路

機器符号用途
PSX1給水タンク下限検知センサー
OL汲み上げポンプ電動機サーマルリレー
RYIL汲み上げポンプ運転インターロックリレー

汲み上げポンプ運転のインターロック回路を新規に追加しました。

負荷(RYILのリレー)には+24Vを与えたいので、PNP出力タイプの近接センサーを使用しています。

動作の仕様としては、

  • 給水タンク下限(LS1)が未検知
  • 汲み上げポンプ電動機サーマルリレーが正常

ならRYILがオンする回路です。

RYILがオンしている状態でなければ、汲み上げポンプは運転できないようにしています。

インターロック回路を別で設置しておくと、可読性およびメンテナンスが楽になりますよ。

汲み上げポンプ運転指令回路

インターロック用に追加したリレーの接点は、運転指令回路にANDで組み込みます。

インターロックは安全・設備保護のために設置するものであり、停止を優先させたいからです。

図のように組み込めば、給水タンクが下限またはサーマルリレーがトリップしたとき絶対に運転できなくなります

運転指令回路はこの形が基本となるので、しっかりと覚えておきましょう。

給水タンクが空になったらポンプを停止するはこれで完成

今回の作業で、給水タンクの水がないときにポンプが運転しないようにできました。

水量チェックは単純な内容ですが、センサーの出力形態の選び方やインターロック回路について学べる良い教材です。

どんな制御機器についても安全な回路を設計できるよう、考えるクセを付けてくださいね。

次は【レベル3-2】貯水タンクが満水になったらポンプを停止させるへ

次は貯水タンクが満水になったら汲み上げポンプを停止する回路を組みましょう。

今回の内容をしっかりと理解していれば、なんとなくどんな回路を組めばいいか想像できたのではないでしょうか?

想像がつかない人は、もう一度今回の内容を読み直してください。

安全に関する考え方は必ず身に着けないといけない知識なので、がんばって理解しましょう。

⇒【レベル3-2】貯水タンクが満水になったらポンプを停止させる

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