レベル3-2では、貯水タンクの水量が満水になったとき汲み上げポンプを停止する回路を追加します。
貯水タンクの容量を超えて水を供給しないよう、オーバーフローを防止するためのインターロックですね。
レベル3-1で追加した給水タンクの下限検出と同様に、近接センサーを追加して水位をチェックしていきます。
前回の復習となる内容なので、読み進めながら自身で考えてみましょう。
汲み上げポンプ用貯水タンクの概要
貯水タンクにはフロート式の液面計を追加。
今回は上限を検出したいので、液面計の上部に近接センサーを1つ設置します。
追加する近接センサーはN.OまたはN.Cどちらが適切なのか。次項を読み進める前に一度考えてみましょう。
貯水タンクのオーバーフロー検知にはノーマルクローズ(N.C)の近接センサーを使用する
貯水タンクのオーバーフローを検出するのに適切な出力形態は、ノーマルクローズです。
ノーマルクローズ、ノーマルオープンどちらを使うべきか悩んだら、断線したときに安全側へ動作するかを考えます。
ノーマルオープンを使用した場合…
センサー状態 | フロート位置 | 信号入力 | ポンプ運転可否 |
---|---|---|---|
正常 | 上限 | オン | ○不可能 |
上限以外 | オフ | ○可能 | |
断線 | 上限 | オフ | ✕可能 |
上限以外 | オフ | ○可能 |
ノーマルオープンの近接センサーを使用した場合、断線するとフロートが上限にあっても応答がありません。
よって汲み上げポンプは貯水タンクが満水ではないと誤検知。オーバーフローが発生します。
これではインターロックとして成立しないため不適切です。
ノーマルクローズを使用した場合…
センサー状態 | フロート位置 | 信号入力 | ポンプ運転可否 |
---|---|---|---|
正常 | 上限 | オフ | ○不可能 |
上限以外 | オン | ○可能 | |
断線 | 上限 | オフ | ○不可能 |
上限以外 | オフ | ○不可能 |
ノーマルクローズを採用した場合、どのパターンにおいても安全側へ動作することがわかります。
断線時は貯水タンクの水位が上限にある状態と同じなので、ポンプは運転できません。
よってセンサーの断線でオーバーフローを引き起こすことはなくなります。
制御回路の設計
ここからは、レベル3-1で設計した回路に貯水タンクの上限でポンプを停止する仕様を追加します。
まずはレベル3-1で設計した回路を確認しましょう。
レベル3-1で設計した汲み上げポンプ運転回路
貯水タンクの上限インターロックを追加する
レベル3-1で設計した回路に、貯水タンクの上限でポンプを停止する回路を追加します。
完成図は以下のとおりです。
今回追加したのは赤字の部分です。
汲み上げポンプ運転インターロックの条件に、『貯水タンク上限検知センサー PXS2』をANDで接続します。
よって以下の条件を満たすとき、汲み上げポンプを運転できるインターロック回路となりました。
- 給水タンクが空でない(PXS1がオフの状態)
- 貯水タンクが満水ではない(PXS2がオフの状態)
- 汲み上げポンプのサーマルリレーがトリップしていない(OLがオフの状態)
機器符号 | 用途 |
---|---|
PXS1 | 給水タンク下限検知センサー |
PXS2 | 貯水タンク上限検知センサー |
OL | 汲み上げポンプ電動機サーマルリレー |
RYIL | 汲み上げポンプ運転インターロックリレー |
インターロック回路にポンプを運転したくないシチュエーションを加えていけばOKです。
貯水タンクが満水になったらポンプを停止する回路はこれで完成
今回の内容は、給水タンク下限検知追加の内容を理解していれば簡単だったと思います。
手動でポンプを運転するだけならこの回路で十分です。
レベル3-1、3-2の内容をしっかりと理解して、手動運転回路の基本を抑えておきましょう。
次は【レベル3-3】運転準備回路と非常停止回路を追加するへ
現状の回路ではタンクの水量さえ基準内であれば、いつでもスイッチで運転できてしまいます。
オーバーフローやポンプの故障こそ防げるものの、メンテナンスや機器の故障が起きた際に停められないかもしれません。
意図せぬ動作が発生した際、確実に停止できるよう運転準備回路と非常停止回路を追加していきましょう。
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