- リレーは回路のオン/オフを切り替える役割をもつ
- リレーには有接点リレーと無接点リレーがあり、基本は価格の安い有接点リレーを使用する
- 無接点リレーは頻繁に開閉を繰り返す回路に使用する
- リレーはコイルとa接点、b接点、c接点のいずれかで構成されている
- a接点はコイルがオンすると回路が閉じる(つながる)
- b接点はコイルがオンすると回路が開く(切れる)
- c接点はコモンひとつに対してa接点とb接点がセットになったもの
- リレーの構成は必ず本体に記載されている
この章では、リレーとは何かについて学びます。
シーケンス制御においてリレーは超重要部品であり、これを理解しないと設計どころか回路を読むことすらできません。
そんな基礎となるリレーの仕組みや種類、接点の構成について詳しく説明していきます。
リレーとは電気信号で回路のオン/オフを切り替える部品のこと
電気信号の入力状態で回路のオン/オフを切り替える部品のことを、リレーと呼びます。
日本語では『継電器』と呼ばれるようです。
リレーは電気信号で回路のオン/オフを切り替えるスイッチのようなもの。
オムロン製ミニパワーリレーの動作gif動画
上記の動画は有接点リレーの動作を示しており、上側の端子が左右の端子と接触を変えることで、電気の行き先を変えています。
この行き先を変える仕組みは、リレーの構造によって異なり、
- コイル(電磁石)によって行き先を変える有接点リレー
- 半導体を利用して電気の行き先を変える無接点リレー
の2種類が存在します。
有接点リレー、無接点リレーの各々にメリット・デメリットが存在するので、適材適所で使用する設計スキルが必要です。
リレーシーケンス制御の基礎を学ぶならコチラ
有接点(メカニカル)リレー
有接点リレーとは、電磁作用により機械的に接点を開閉するリレーです。
電磁石のコイルに電圧を印加すると、磁力で接点の開閉状態を変化させ、回路のオン/オフを制御する仕組み。
物理的な接触を繰り返すため、接触点が摩耗したり、溶着したりして切り替えられなくなるなどの故障が発生します。
そのため、有接点リレーは頻繁に開閉をおこなわない回路で用いられることがほとんどです。
特徴
- 無接点リレーと比べて安価
- 大電力・大電流の制御が得意
- 定格電圧、電流を超えても故障しにくい
- 接点の種類や組み合わせが豊富(a接点、b接点、c接点)
有接点リレーの強みはコストの低さです。
リレーで回路を設計する際は、コスト低減を目的として有接点リレーの使用を基準に考えましょう。
注意点
- 接点切り替えに時間がかかる(20ミリ秒以下)
- 開閉回数に上限がある
- 接点が溶着する可能性がある
- 接点が摩耗すると動作不良が起きる
- コイルの消費電流が大きい
- 接点切替時にチャタリングとアーク(電気火花)が発生する
有接点リレー最大のデメリットは、接点の開閉回数に上限があることです。
頻繁に接点の開閉を繰り返す回路では、あっという間に接点がすり減って故障します。
そのため、有接点リレーを使用する際は、開閉の頻度をなるべく少なくする工夫が必要です。
無接点(ソリッドステート)リレー
無接点リレーとは、物理的な接点を持たない半導体スイッチング素子で構成されたリレーです。
有接点リレーと異なり、機械的な可動部や接触の切り替えがないため接点の消耗や溶着がありません。
そのため高頻度の開閉動作を必要とする回路や、接点溶着による誤動作を避けたい回路で利用されます。
特徴
- 接点切り替え時間が短い(1ミリ秒以下)
- 開閉回数に制限がない
- 接点の溶着がない
- 振動や外力による誤作動がない
- コイルの消費電流が小さい
- 接点切替時のチャタリングとアーク(電気火花)がない
無接点リレーの特徴は、接点を持たないため開閉回数に制限がないことです。
有接点リレーでは対応できない頻繁にオン/オフを繰り返す回路への利用に向いています。
注意点
- 有接点リレーよりも価格が高い
- 発熱量が多いため盤内の冷却が必要
- 高温下で使用すると極端に寿命が短くなる
- OFF時でも漏れ電流が発生する
- a接点しか存在しない
無接点リレーは半導体を使用しており、発熱量が多い割に、自身は熱に弱いといった特徴があります。
場合によっては、冷却のための設計、冷却装置の追加によるコスト増加も考えないといけません。
そもそも無接点リレー自体が高価であるため、有接点リレーの回路よりもコストが高く付きます。
そのため、特別な事情がある場合のみ無接点リレーを使用しましょう。
リレーで使われるa接点、b接点、c接点の違い
リレーには3つの接点構成が存在します。
- a接点(メーク接点)
- コイルがオンすると接点が閉じる
- b接点(ブレーク接点)
- コイルがオンすると接点が開く
- c接点(トランスファ接点)
- a接点とb接点が1つになった接点
シーケンス制御はこれらの接点の組み合わせることで、複雑な制御を可能としています。
各役割と名称を知っておかないと、シーケンス制御を理解するのは不可能です。
a接点(メーク接点)
a接点とは、リレーのコイルに電流を流したとき回路がつながる接点のことです。
コイルに電流を流すと磁力が発生し、スイッチを引き寄せることで回路を接続(接点を閉じる)します。
電流をオフにすると磁力がなくなり、バネの力でスイッチが引き離され回路を遮断する(接点が開く)仕組みです。
リレーが有するa接点の個数を表すときは、『数字+a』というように表記します。
- コイルがオフで接点が開く
- コイルがオンで接点が閉じる
シーケンス回路上でのa接点記号
a接点がひとつなので1a接点と表記する
b接点(ブレーク接点)
b接点とは、リレーのコイルに電流が流れていないとき回路が繋がっている接点のことです。
コイルに電流を流すと磁力が発生し、スイッチを引き離すことで回路を遮断(接点を開く)します。
電流をオフにすると磁力がなくなり、バネの力でスイッチが回路を接続する(接点が閉じる)仕組みです。
リレーが有するb接点の個数を表すときは、『数字+b』というように表記します。
シーケンス回路上でのb接点記号
b接点がひとつなので1b接点と表記する
c接点(トランスファ接点)
c接点とは、ひとつの入力に対してa接点とb接点の2つ出力をもつ接点のことです。
コイルのオン/オフで、導通する回路が切り替わります。
a接点、b接点ともに電源を共有できるため、配線工数を下げることが可能です。
リレーが有するc接点の個数を表すときは、『数字+c』というように表記します。
シーケンス回路上でのc接点記号
c接点がひとつなので1c接点と表記する
1a1b接点と1c接点は同じではない
1c接点が1a接点と1b接点で構成されているなら、1a1b接点と同じじゃないか?
と思う人もいるかも知れませんが、1c接点と1a1b接点は、コモンが共通か独立しているかという違いがあります。
1c接点は電源(コモン)が共通なので、異なる回路でa接点とb接点を使い分けられません。
そのかわり同じ電源(コモン)を利用するなら、配線の手間が省けます。
対して1a1b接点なら、電源(コモン)が独立しているので、異なる電源や入力が使えます。
逆に同じ電源(コモン)を利用する際は、配線の手間が増えるデメリットも。
どちらが良い悪いという話ではなく、無駄を省ける構成になるよう適切な接点構成を選択するのが大切です。
実際のオムロン製リレーをもとに電気の流れを考えてみよう
ここでは、オムロン製のミニパワーリレーMY2N-D2 DC24Vをもとに、
- 内部回路の読み方
- 配線の方法
について説明します。
内部回路の読み方
リレー本体には、必ず内部回路を表した図が記載されています。
オムロン製 ミニパワーリレーMY2N-D2 DC24Vの内部回路図
オムロン製ミニパワーリレーMY2N-D2 DC24Vの内部回路図をみると、
- c接点が2つ(2c)
- コイルが1つ
といった構成になっています。
配線方法
上記の回路と同じ回路をMY2N-D2 DC24Vで再現する場合、下記のとおり配線します。
- 端子14(+)⇔13(-)間はコイル操作用の電源入力
- 端子14(+)には+24Vを接続
- 端子13(-)には0Vを接続
- 端子1,5,9(4,8,12)間はc接点を構成
- 端子9(12)には電源入力(コモン)を接続
- 端子5(8)は端子9(12)の電源がコモンのa接点
- 端子1(4)は端子9(12)の電源がコモンのb接点
コイルがオフの状態
コイルがオンの状態
c接点を構成する端子1,5,9と端子4,8,12は、お互いに独立した回路です。
そのため、以下の回路構成ようにDC回路とAC回路を同時に制御できたりもします。
コイルがオフの状態
コイルがオフの状態
AC電源とDC電源とは何か?
問題:オムロン製LY4N-D2 24VDCの構成と配線方法は?
オムロン製LY4N-D2 24VDCの回路図から、接点構成と各端子の役割を考えてみてください。
オムロンLY4N-D2 24VDCの内部回路
答え
- 1コイル
- 4c接点
- 端子14(+)⇔13(-)間はコイル操作用の電源入力
- 端子14(+)には+24Vを接続
- 端子13(-)には0Vを接続
- 端子1,5,9間はc接点を構成
- 端子9には電源入力(コモン)を接続
- 端子5は端子9の電源がコモンのa接点
- 端子1は端子9の電源がコモンのb接点
- 端子2,6,10間はc接点を構成
- 端子10には電源入力(コモン)を接続
- 端子6は端子10の電源がコモンのa接点
- 端子2は端子10の電源がコモンのb接点
- 端子3,7,11間はc接点を構成
- 端子11には電源入力(コモン)を接続
- 端子7は端子11の電源がコモンのa接点
- 端子3は端子11の電源がコモンのb接点
- 端子4,8,12間はc接点を構成
- 端子12には電源入力(コモン)を接続
- 端子8は端子12の電源がコモンのa接点
- 端子4は端子12の電源がコモンのb接点
リレーの接点構成と各接点の役割を理解しよう
- リレーは回路のオン/オフを切り替える役割をもつ
- リレーには有接点リレーと無接点リレーがあり、基本は価格の安い有接点リレーを使用する
- 無接点リレーは頻繁に開閉を繰り返す回路に使用する
- リレーはコイルとa接点、b接点、c接点のいずれかで構成されている
- a接点はコイルがオンすると回路が閉じる(つながる)
- b接点はコイルがオンすると回路が開く(切れる)
- c接点はコモンひとつに対してa接点とb接点がセットになったもの
- リレーの構成は必ず本体に記載されている
シーケンス制御を学んでいくうえで、リレーと接点の役割は基礎知識として必ず身に着けないといけません。
どんな制御機器を使うにしてもリレーの知識が必要になるため、この章を何度も読み返して理解するようにしてください。
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