FANUCの0i-MODEL Fではフィールドネットワークのひとつ「CC-Link」に対応しています。
CC-Linkを導入することで、PMCラダーにて周辺機器のI/O信号を制御および監視が可能です。
ここではCC-Link導入に必要な部品からハード設計、パラメータ設定について解説します。
CC-Linkについてのおさらい
CC-Linkとはフィールドネットワークのひとつ。
RS-485をベースに三菱電機が開発した通信方法で、最高10Mbps、最長1200mまでの延長に対応しています。
ケーブルはCC-Link専用品が必要で、他のケーブルで代用はできません。
接続方法
接続端子は「DA」「DB」「DG」「SLD」「FG」の5点。
末端のCC-Link対応機器には「DA」「DB」端子間へ110Ωの終端抵抗の設置が必要です。
マスター・スレーブ方式
CC-Linkはマスター機器1台と複数のスレーブ機器で回路を構成します。
スレーブは最大64台(すべて1局専有の場合)まで接続可能です。
CC-Link対応機器は「マスターのみ」「スレーブのみ」「マスター/スレーブ対応」の3種類。
今回使用するFANUCのCC-Linkユニットはスレーブのみの対応となるため、マスター局が別途必要な点に注意してください。
局番と専有局数
局番はCC-Link機器に割り付けられる番号です。
マスターは必ず0局。スレーブは1〜64局の範囲で割り付けられます。
専有局数はCC-Link機器が専有するI/O点数のこと。
1専有局あたり入出力で32ビット、ワードデータ入出力で4ワードのI/Oを制御可能です。
ローカル局対応機器は1〜4局から選択でき、リモートI/O局対応機器は1局を専有します。
ボーレート
ボーレートはCC-Link機器間の通信速度のこと。
同一回路内のCC-Link機器は、すべて同じボーレートに設定しないといけません。
ボーレートを上げるほどI/Oの更新頻度は向上しますが、ケーブルの最大延長距離が減少する点に注意が必要です。
FANUC製CC-Linkリモートデバイス機能の通信仕様
CC-Linkリモートデバイス機能としての仕様
項目 | 仕様 | |
---|---|---|
通信プロトコル | CC-Link Ver1.10 | |
種類 | リモートデバイス局 | |
転送速度(ボーレート) | 156K/625K/2.5M/10Mbpsより選択 | |
局番 | 1~64 | |
専有局数 | 1~4局 | |
最大転送データサイズ | リモート出力RY | 16バイト(128ビット) ユーザー領域:14バイト システム領域:2バイト(使用禁止) |
リモート入力RX | 16バイト(128ビット) ユーザー領域:14バイト システム領域:2バイト(使用禁止) | |
リモートレジスタRWw | 16ワード(32バイト) | |
リモートレジスタRWr | 16ワード(32バイト) |
占有局数と最大転送データサイズ
入出力に使用できるI/Oの点数は、占有局数に依存します。
占有局数とI/O点数の関係性は以下のとおりです。
占有局数 | リモート出力RY | リモート入力RX | リモートレジスタRWw | リモートレジスタRWr |
---|---|---|---|---|
1局占有 | 全4バイト ユーザー領域:2バイト システム領域:2バイト | 全4バイト ユーザー領域:2バイト システム領域:2バイト | 全4ワード (8バイト) | 全4ワード (8バイト) |
2局占有 | 全8バイト ユーザー領域:6バイト システム領域:2バイト | 全8バイト ユーザー領域:6バイト システム領域:2バイト | 全8ワード (16バイト) | 全8ワード (16バイト) |
3局占有 | 全12バイト ユーザー領域:10バイト システム領域:2バイト | 全12バイト ユーザー領域:10バイト システム領域:2バイト | 全12ワード (24バイト) | 全12ワード (24バイト) |
4局占有 | 全16バイト ユーザー領域:14バイト システム領域:2バイト | 全16バイト ユーザー領域:14バイト システム領域:2バイト | 全16ワード (24バイト) | 全16ワード (24バイト) |
CC-Linkリモートデバイス局ボードのハード仕様
CC-Linkリモートデバイス局ボード型式と外形図
ハードウェア図番(型式) | A20B-8101-0551 |
---|---|
対応機種 | Series 30i/31i/32i-A Series 30i/32i/32i/35i-B Power Motion i-A Series 0i-F |
LED表示と内容
名称 | 色 | 点灯 | 消灯 |
---|---|---|---|
RUN | 緑 | オンライン | オフライン |
SD | 緑 | データ送信中 | データ送信していない |
RD | 緑 | チャンネルキャリア検出 | チャンネルキャリアエラー |
ERROR | 赤 | CRCエラー検出 | 正常通信中 |
LEDのパターンと症状
LED | 状態 | チェック項目 | |||
---|---|---|---|---|---|
RUN | SD | RD | ERR | ||
■ | ■(点滅) | ■ | □ | 正常通信中 | なし |
■(点滅) | CRCエラー | ケーブル結線 終端抵抗異常 ノイズ ボーレート | |||
■ | □ | ■ | □ | マスタ局から自局宛データが受信できない | マスタ局の設定 |
□ | ■(点滅) | ■ | □ | マスタ局がリンク起動していない | マスタ局の設定 |
□ | □ | ■ | □ | データを受信できていない | ケーブルの結線 ノイズ対策 マスタ局の設定 |
□ | □ | □ | □ | ケーブルが断線 マスタ局の電源が入っていない CNCのシステムアラーム | ケーブルの結線 マスタ局の設定 |
その他組み合わせ | その他エラー | FANUCサービスへ連絡 |
異常発生時の確認項目と内容
LEDにて異常が確認できた際は、以下の対策を講じてください。
ケーブルの結線 | ケーブルが断線していないか ケーブルとコネクタが正しく接続されているか ケーブルを無理に曲げていないか スレーブ局間の距離は正しく取ってあるか |
---|---|
終端抵抗 | 終端抵抗はケーブルの両端に接続されているか 終端抵抗とケーブルの種類は正しいか |
ノイズ対策 | 各機器は接地されているか |
ボーレート | マスタ局・スレーブ局で同じボーレートに設定されているか |
マスタ局の設定 | マスタ局の電源は入っているか マスタ局は正常に動作しているか マスタ局の設定が正しく行われているか |
コネクタと通信ケーブルの接続
コネクタの外形と型式
コネクタ型式 | MVSTBW2.5/5-STF-5.08AU(フェニックスコンタクト) |
---|
端子番号 | 信号名 |
---|---|
1 | DA |
2 | DB |
3 | DG |
4 | SLD |
5 | FG |
適合電線と接続規定
適合電線 | 信号用 | AWG24-12 |
FG信号 | 2m㎡以上の撚り線 (100mm~300mm以内の線長で接地) |
接続の際はフェニックスコンタクト社製のフェルール端子を推奨しています。
ケーブルと終端抵抗の取り付け
FANUCのCC-Linkリモートデバイス局ボードがCC-Link回路内で終端に位置する場合、終端抵抗を取り付けます。
抵抗の接続先は信号名DA、DB間です。
また使用するCC-Linkケーブルごとに抵抗の値が違うため、下記を参照に抵抗を選定してください。
使用ケーブル | 終端抵抗 |
---|---|
Ver1.10対応 CC-Link専用ケーブル | 110Ω±5% 1/2W |
Ver1.00対応 CC-Link専用ケーブル | 110Ω±5% 1/2W |
Ver1.00対応 CC-Link専用高性能ケーブル | 130Ω±5% 1/2W |
CC-Linkケーブルのノイズ対策
CC-Linkケーブルを敷設する際は、ケーブルクランプを使用してシールド処理をしてください。
CC-Linkリモートデバイス機能ボードの取り付け
一体型ユニットへの取り付け
一体型ユニットの場合、コントロールユニットのオプションスロットへ取り付けます。
取り付けるスロットに制約はありません。
分離型ユニットへの取り付け
分離型ユニットの場合、コントロールユニットのオプションスロットへ取り付けます。
取り付けるスロットに制約はありません。
CC-Linkオプションパラメーターの追加
CC-Linkを利用するには、オプションパラメーターを変更し機能を開放しないといけません。
オプションパラメーターデータをFANUCから購入し、インストールすることで有効となります。
CC-Linkリモートデバイス機能オプションパラメーターの購入方法
FANUCへ注文する際は、注文番号と機能名を伝えれば見積をもらえるはずです。
オプションビットアドレス | 注文番号 | 機能名 |
---|---|---|
1123.7 | A02B-0340-R954 | CC-Linkリモートデバイス機能 |
オプションパラメーターのインストール方法
- パラメーター書込可に設定
- 『MDIモード』に変更
- ハードキーの『SYSTEM』を押下
- ソフトキーから『パラメータ』→『操作』を選択
- ソフトキー『▷』を押し『OPRED(オプションリード)』を選択
- ソフトキー『実行』を押し、指示に従い電源を再投入する
オプションパラメーターのインストール確認方法
- 『MDIモード』に変更
- ハードキーの『SYSTEM』を押下
- ソフトキーから『診断』→『操作』を選択
- ソフトキー『パラメータNo.』を選択
- 対象となるオプションビットNo.を入力
- ソフトキー『No.サーチ』を選択
- 対象のオプションビットが『1』になっていればインストール成功
CC-Link通信パラメータの設定
ここからは、以下の仕様をもとに実際にCC-Linkパラメータの設定をしていきます。
ボーレート | 10Mbps |
---|---|
局番 | 2 |
占有局数 | 4 |
CC-Link機能のステータス格納アドレス | R1000~R1002(3バイト) |
マスタ局異常時の入力データの保持 | 有効 |
リモート入力(RX)アドレス範囲 | R1100.0~R1115.7(16バイト) |
リモート出力(RY)アドレス範囲 | R1200.0~R1215.7(16バイト) |
リモートレジスタ(RWw)アドレス範囲 | R1300.0~R1331.7(32バイト) |
リモートレジスタ(RWr)アドレス範囲 | R1400.0~R1431.7(32バイト) |
基本設定
項目 | 設定値 | 説明 |
---|---|---|
ボーレート | 10Mbps | 通信速度を設定します。CC-Link上のすべての機器で同一の速度を設定してください。 |
局番 | 2 | CC-Linkローカルデバイス機能が使用する局番を設定します。 |
占有局数 | 4 | CC-Linkローカルデバイス機能が占有する局数を設定します。 |
ステータスアドレス | R1000 | CC-Linkローカルデバイス機能のステータスを格納するPMCアドレスを設定します。 PMCアドレスは『R領域』または『E領域』が設定可能です。 ステータスを使用しない場合は『空白(SP)』としてください。 |
異常時の入力データ | 保持 | マスタ局からデータを受診できないとき、入力信号を保持します。 |
リモート入出力設定
リモート入出力 | アドレス | サイズ(バイト) |
---|---|---|
RY(出力) | R1100 | 14 |
RX(入力) | R1200 | 14 |
リモート入出力(RX、RY)の設定詳細
- 設定可能なPMCアドレス
- R領域またはE領域
- 設定可能なサイズの範囲
- 1局占有時:0~2バイト
- 2局占有時:0~6バイト
- 3局占有時:0~10バイト
- 4局占有時:0~14バイト
リモートレジスタ | アドレス | サイズ(ワード) |
---|---|---|
RWw(出力) | R1300 | 16 |
RWr(入力) | R1200 | 16 |
リモートレジスタ(RWw、RWr)の設定詳細
- 設定可能なPMCアドレス
- R領域またはE領域
- 設定可能なサイズの範囲
- 1局占有時:0~4ワード
- 2局占有時:0~8ワード
- 3局占有時:0~12ワード
- 4局占有時:0~16バイト
接続確認とトラブルシューティング
CC-Linkリモートデバイス機能の保守画面から、接続確認とエラーコードを確認できます。
モニタの各種項目
ステータス | オンライン オフライン | マスタ局との通信状態を示します。 オンライン:マスタ局と正常に通信中 オフライン:マスタ局と通信していません |
---|---|---|
エラー状態 | ーーー | エラーはありません |
パラメータ設定エラー | 通信パラメータの設定に誤りがあります | |
チャンネルキャリアエラー | CRCエラーが発生しています | |
マスタ局CPUエラー | マスタ局のCPUでエラーが発生しています | |
マスタ局停止 | マスタ局のユーザーアプリケーションが停止しています | |
メーカコード | 0316H | メーカーコード「0316H」はFANUCを示します。 |
機種コード | 22H | CNCの機種コードを示します。 |
エラー状態と対処法
パラメータ設定エラー
通信パラメータの設定に誤りがあります。
対策
CC-Linkの設定画面で設定する通信パラメータに誤りがないか確認してください。
チャンネルキャリアエラー
チャンネルキャリアの検出に失敗しました。
対策
- マスタ局の電源を入れてください。
- ケーブルに断線がないか確認してください。
- ケーブルの曲げに無理がないか確認してください。
- 終端抵抗が正しく取り付けられているか確認してください。
CRCエラー
CRCエラーが発生しています。
対策
- ケーブルに断線がないかを確認してください。
- 終端抵抗が正しく取り付けられているか確認してください。
- マスタ局と同一のボーレートが設定されているか確認してください。
- ノイズ対策が適切になされているか確認してください。
マスタ局CPUエラー
マスタ局のCPUでエラーが発生しました。
対策
- マスタ局のCPUは正常に作動しているか確認してください。
マスタ局停止
マスタ局のユーザーアプリケーションが停止しています。
対策
- マスタ局のシーケンスプログラムは正常に作動しているか確認します。
【おまけ】CC-Linkリモートデバイス機能のステータス
アドレス | #7 | #6 | #5 | #4 | #3 | #2 | #1 | #0 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
M | MOUT | LINK | ||||||
M+1 | CHERR | TIMER | CRCER | |||||
M+2 | MCPU | MAPP |
M#0 LINK
マスタ局との回線状態を示します。
- 0:オフライン→マスタ局と通信してません。
- 1:オンライン→マスタ局と正常に通信しています。
M#1 MOUT
入力信号(RY、RWw)の入力状態を示します。
- 0:正常に入力されています。
- 1:入力信号は「異常時のデータ入力」に従う
M+1#0 CRCER
CRCエラーが発生したことを示します。
- 0:正常
- 1:CRCエラー発生
M+1#1 TIMER
マスタ局からデータを受信できない際に、タイムオーバーエラーが発生していることを示します。
- 0:正常
- 1:タイムオーバーエラー発生
M+1#2 CHERR
チャンネルキャリア検出エラーが発生していることを示します。
- 0:正常
- 1:チャンネルキャリア検出エラー発生
M+2#0 MAPP
マスタ局で信号処理をおこなっている、ユーザーアプリケーションの動作状態を示します。
- 0:STOP
- 1:RUN
M+2#1 MCPU
マスタ局でユーザーアプリケーションを制御するCPUの状態を示します。
- 0:正常
- 1:CPU異常
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