【レベル1-3】汲み上げポンプ用電動機のブレーカーを選定する|設計しながら学ぶ電気制御設計講座

ここでは、メインブレーカー(ELB)を設置していきます。

目次
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ブレーカーの回路記号

ブレーカー(配線用遮断器)の回路記号は上記のとおり。

機器符号は『ELB』、補助情報に定格電流(AT)とフレームサイズ(AF)を記載します。

上記の場合、定格125Aでフレームサイズが125です。

ブレーカーの選定手順

  • 推定短絡電流から遮断器のクラスを決める
  • 負荷の消費電流からブレーカーの定格電流を決める
  • 定格電流からフレームサイズを決める

①2次側負荷の消費電流から定格電流を決める

今回の回路では、ブレーカーの2次側負荷の消費電流は85.6Aです。

ブレーカーの定格電流は、少なくとも85.6A以上でないといけません。

定格電流を決定する際は、消費電流に安全率1.25倍を乗じた値を基準とします。

ブレーカーの定格電流基準値

定格電流基準値[A] = 2次側消費電流[A] × 安全率

107[A] = 85.6[A] × 1.25

以上の計算結果より、定格電流は107Aより大きい最小を選べば良いことがわかりました。

三菱電機の配線用遮断器カタログより、定格電流107Aより大きい最小の機種は以下のとおりです。

クラスフレームA定格電流型式
経済品(NF-C)125AF125ATNF125-CV
汎用品(NF-S)NF125-SV
NF125-SEV
高性能品(NF-H/R)NF125-HV
NF125-RV
NF125-HEV
超限流ブレーカ(FN-U)NF125-UV

以上の結果より、定格電流は125Aで以下の型式からブレーカーを選定していくことになります。

ブレーカー候補一覧
  • NF125-CV 125A
  • NF125-SV 125A
  • NF125-SEV 125A
  • NF125-HV 125A
  • NF125-RV 125A
  • NF125-HEV 125A
  • NF125-UV 125A

②定格電流が2次側電線の許容電流よりも小さいことを確認する

ブレーカの定格電流は、2次側電線の許容電流より小さくないといけません。

これは定格電流以下、許容電流以上の電流が流れた際、トリップしないために電線が焼損するからです。

【レベル1-2】電線を選定するより、2次側電線は38sqと選定しましたよね。

38sq電線に敷設環境による減少係数を乗じると、2次側電線の許容電流は次の値となります。

2次側電線の許容電流

許容電流[A] = 38sq電線の許容電流[A] × 電流減少係数[%]

147.42 = 162 × 0.91

以上の結果より、2次側電線の許容電流は147.42A。

ブレーカーの定格電流125Aは、許容電流147.42Aの85%程度なので問題ないといえます。

③推定短絡電流からクラスを選択する

推定短絡電流の計算は、厳密におこなうと非常に煩雑です。

なので、三菱電機が公開している短絡電流早見表を使います。

電源となる変圧器の容量と電線の太さ、長さよっておおよその短絡電流を算出することが可能です。

今回の回路では電源が客先範囲で不明なので、設備容量に応じた変圧器の容量から選定します。

設備容量の計算式

設備容量[kVA] = 電圧[V] × 消費電流[A] × √3

29.6kVA ≒ 29652VA = 200V × 85.6A × √3

回路の設備容量が約29.6kVAなので、電源の変圧器容量は余裕をみて50kVAとして短絡電流を算出しましょう。

引用元:6.7 短絡電流早見表 |三菱ノーヒューズ遮断器・漏電遮断器 技術資料集

電源用の変圧器からの距離は不明なので、最も条件が悪い0.1mで算出します。

その結果、今回の回路における短絡電流はおおよそ6kAであることがわかりますね。

ここで候補となるブレーカーの定格短絡遮断容量を確認してみましょう。

クラスJIS AC200V定格短絡遮断容量kA
(Icu/Ics)
型式
経済品(NF-C)30/15NF125-CV
汎用品(NF-S)50/50NF-125-SV
85/85NF125-SEV
高性能品(NF-H/R)100/75NF125-HV
150/150NF125-RV
100/100NF125-HEV
超限流ブレーカ(FN-U)200/200NF125-UV

推定短絡電流約6kAに対して、経済品NF125-CVの定格短絡遮断容量30kAで十分対応できることがわかります。

③突入電流でトリップしないことを確認する

②で選定した『NF125-CV 125A』が、電動機の突入電流でトリップしないかを確認します。

汲み上げポンプ用の電動機における突入電流は508A。

ブレーカーの動作特性曲線をみて、508Aが瞬間的に流れたときトリップしないことをチェックしましょう。

引用元:7 特性と外形 |三菱ノーヒューズ遮断器・漏電遮断器 技術資料集

定格電流の約900%の電流が流れると、ブレーカーは即時トリップするようです。

125Aの900%は1,125Aなので、電動機の突入電流508Aは瞬時引きはずし領域にはっていないことがわかります。

メインブレーカーはNF125-CV 3P 125AT/125AFが適切である

メインブレーカーを選定するために割り出した結果は以下のとおりです。

  • 定格電流 ⇒ 125AT
  • 定格電流(125A) < 2次側電線許容電流(147.42A)
  • 推定短絡電流約6kA ⇒ 経済品(NF-C) Max30kA
  • 瞬時引きはずし電流(約1,125A) > 突入電流(508A)

これらの結果より、メインブレーカーに適切な製品は『NF125-CV 3P 125AT/125AF』であることがわかりました。

部品リストには以下のように記載しておきましょう。

機器符号名称型式数量メーカー
ELB配線用遮断器NF125-CV 3P 125AT/125AF1三菱電機

参考:配線用遮断器 NF125-CV 仕様|三菱電機株式会社

【レベル1-4】アース線の選定をおこなう

ブレーカーがわかったら、アース線を選定します。

⇒ 【レベル1-4】アース線の選定

参考リンク

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