【レベル2-2】ダウントランスとスイッチで電磁接触器を操作する|設計しながら学ぶ電気制御設計講座

レベル2−1で設置した電磁接触器をスイッチにて操作する回路を追加します。

電磁接触器単体では用をなさないため、コイルを操作する回路が必要です。

ここではコイルを操作するために、単相交流100Vを作り出すダウントランスの追加と操作用のスイッチを追加します。

目次
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ダウントランスで三相交流200Vから単相交流100Vを取り出す

電磁接触器を操作するための単相AC100Vを、三相AC200Vから取り出します。

ここで必要となる部品が「ダウントランス」です。

三相交流電源から単相交流電源を取り出す

まず最初に、単相交流電源の取り出し方法について説明します。

やり方は簡単で、三相交流電源のR相、S相、T相のうち2本に接続するだけ。

  • R-S
  • S-T
  • T-R

上記のどのつなぎ方でも問題ありません。

一般的にはR-Sに接続して単相交流電源を取り出すことがほとんどです。

なので今回はR相とS相から単相交流電源を取得します。

ダウントランスの追加・選定

単相交流電源を取り出しましたが、電圧は200Vなので、このままでは電磁接触器の操作には使えません。

なのでAC200VからAC100Vに降圧して上げる必要があります。

そこで登場するのがダウントランス(降圧変圧器)。

入力側の電圧を任意の電圧へ降圧し出力する機器です。

入力電圧と出力電圧の選定

トランスを選定する際は、入力電圧と出力電圧を決めます。

今回の回路だと電源が200V、ほしい電圧が100Vです。

なので入力200V、出力100Vのトランスを選択します。

トランスの容量の選定

トランスには出力側の電力に制限があります。

最大出力電力はトランスの容量で決まるため、出力側の消費電力を計算し必要量を求めないといけません。

今回AC100Vで操作するのは、組み上げポンプ操作用の電磁接触器のコイルです。

このコイルの消費電力から、トランスに必要な容量を求めていきます。

組み上げポンプ用電磁接触器コイル特性
電磁開閉器型式S-T100 (三菱電機)
コイル入力瞬時消費電力210VA
コイル入力常時消費電力23VA

電磁接触器のコイル入力常時消費電力が23VAなので、トランスに求められる最低容量は23VA以上です。

トランスの容量を決める際は、2次側消費電力に対して1.1倍の安全率を乗じるため、

トランスの必要最低容量の計算式

トランスの最低必要容量[VA] = 最低容量[VA] × 安全率

25.3VA = 23VA × 1.1

以上の結果より、25.3VAより大きい最小のトランス容量を選べばOKです。

布目電気のカタログから適合するトランスを探す

トランス選定に必要な条件は以下のとおりです。

入力電圧単相交流200V
出力電圧単相交流100V
トランス容量25.3VA以上

実際に布目電気製のカタログからトランスを探してみると、NESB30AE21-00がヒットしました。

25.3VA以上の最小容量が30VAだったのでこの容量としました。

ダウントランス保護用の遮断器選定

ダウントランスを使用する際は、1次側に過電流対策として遮断器による保護が必要です。

遮断器の極数

トランスの1次側回路は、2本の電線で構成される単相200Vです。

なので2本の電線を接続し保護できる2極品を設定します。

遮断器の遮断容量

トランスの容量が30VAなので、以下の計算式で消費電流を求められます。

トランス消費電流の計算式

トランスの消費電流[A] = トランス容量[VA] ÷ 1次側電圧[V]

0.15A = 30VA ÷ 200V

これに安全率1.25を乗じると、遮断器に必要な最低遮断電流は0.1875Aとなります。

なので0.1875A以上で最小の遮断器を選べばOKです。

ブレーカーかサーキットプロテクタか

今回、遮断器に必要な遮断電流は0.1875Aと小さめ。

この場合、三菱電機製ブレーカーの最小定格容量が3Aからなので大きすぎて不適です。

保護電流が極端に小さい場合は、サーキットプロテクタを使用します。

三菱電機製のサーキットプロテクタなら、最小で0.1Aをラインナップ。

カタログをみるとCPシリーズの2極品に定格容量0.25Aがあるので、今回はこれを選択します。

スイッチを追加して電磁接触器を操作する回路を追加する

ここではスイッチを使って、電磁接触器のコイルを操作します。

電磁接触器の操作回路

電磁接触器をスイッチで操作する回路に必要な部品は以下の2つです。

  • スイッチ(a接点)
  • サーマルリレー補助接点(b接点)

電動機を運転する基本的な制御回路なので、各機器の役割をしっかりと確認していきましょう。

スイッチ

スイッチは押釦タイプで、押すと回路が導通するa接点を使用します。

この回路上のスイッチを押すと電磁接触器がオンし、組み上げポンプは運転。離すと組み上げポンプが停止します。

サーマルリレー

スイッチと電磁接触器のコイルの間にサーマルリレーの補助b接点を接続します。

これは組み上げポンプが運転中に過負荷となった際、強制的に運転を停止させるためのものです。

過負荷になるとサーマルリレーがトリップし、動力電源を遮断します。

さらにスイッチの入力を受け付けないようにすることで、電磁接触器もオフ。

より安全な回路を構成できます。

スイッチの選定

スイッチはオムロン製のA22NN-BNM-NBA-G100-Nを使用する前提で、今回の回路に適合するか検討をしていきます。

スイッチが適合するかどうかは、以下の条件を確認すればOKです。

  • モメンタリ/オルタネイト
  • 電圧
  • 負荷の種類
  • 負荷の消費電流

モメンタリ/オルタネイト

モメンタリとは、スイッチを押している間のみオンする機構のこと。ボタンを離せばオフする。別名『自己復帰型』とも呼びます。

オルタネイトとは、スイッチから手を離してもオンの状態を保持する機構のこと。オフするには別の操作が必要。別名『自己保持型』とも呼びます。

組み上げポンプの操作はボタンを押している間のみ運転するという条件なので、モメンタリ型を採用します。

電圧

スイッチには印加できる電圧に上限があります。

使用する回路上の電圧が、スイッチの定格絶縁電圧を超えないことを確認してください。

今回はスイッチにかかる電圧がAC100V。スイッチの定格絶縁電圧が600Vなので、問題ありません。

負荷の種類

スイッチの定格電流は電圧と負荷の種類によって決まります。

負荷の種類は2つあり、抵抗負荷とは電圧をかけた瞬間から負荷の定格消費電流が流れる負荷のこと。白熱電球やヒーターなどが該当します。

誘導負荷とは、ソレノイド・電動機・リレーなどのコイル成分を持つ負荷で、突入電流が発生する負荷のこと。

スイッチの2次側負荷は、電磁接触器のコイルです。

なので誘導負荷に該当します。

負荷の消費電流

電磁接触器S-T100の瞬時消費電力が230VAなので、消費電流は最大2.3A。

なのでスイッチに流れる電流もおおよそ2.3Aであることがわかります。

以上の条件からスイッチの適合結果を確認すると…

引用元:押しボタンスイッチ A22NN-BNM-NBA-G100-NN|OMRON

スイッチに必要な条件とA22NN-BNM-NBA-G100-Nの性能を比較したのが以下の表です。

要件必要な条件スイッチの性能
スイッチの種類モメンタリモメンタリあり
電圧AC100V最大600V
負荷の種類誘導負荷誘導負荷の場合定格電流は約5A
負荷の消費電流最大2.3A

よってA22NN-BNM-④④A-G⑦⑦⑦-Nは、必要な条件を満たしており適切であるということがわかりました。

スイッチで組み上げポンプを運転する回路は完成

これで組み上げポンプをスイッチひとつで自在に操作できるようになりました。

電磁接触器と操作回路はセットで設計しないといけないので、このような回路はよく使います。

電動機操作の基礎となる回路なので、しっかりと理解しておきましょう。

【レベル2-3】操作系統を直流電圧回路に変更する【オペレーター保護】へ

次は直流電源を追加してスイッチの回路を直流電圧で操作します。

わざわざAC100Vから直流に変更する理由も次の章で説明しているので、確認してくださいね。

⇒【レベル2-3】操作系統を直流電圧回路に変更し自己保持回路を追加する

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