電磁接触器と電磁開閉器の違いと選定方法|シーケンス制御ハード設計基礎

この章のまとめ
  • 電磁接触器とは電動機などの出力が大きい機器を制御するリレー
  • 電磁接触器と電磁開閉器の違いはサーマルリレーの有無
  • 電磁開閉器は電動機の定格出力と主接点の開閉頻度でフレームサイズがきまる
  • 接点制御用のコイル仕様を決める際は、制御回路の定格電圧を確認する
  • 補助接点の点数が足りるかは、制御回路を設計後に確認する
  • サーマルリレーの型式と呼びは、電動機の定格出力できまる
  • その他オプションはユーザーの仕様に合わせて追加する

この章では、電磁接触器と電磁開閉器の違いと選定方法について学びます。

動力回路を設計するなら、電磁開閉器と電磁接触器の選定知識は必須です。

一般的なリレーと違い、大電流を制御するため、選定ミスは危険なトラブルを引き起こすことになりかねません。

そんな電磁接触器と電磁開閉器について、シーケンス制御のハード設計で理解するべき基礎を解説します。

目次
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電磁接触器と電磁開閉器とは

電磁開閉器と電磁接触器はリレーの一種であり、おもに電動機など大型機器を操作するのに利用されます。

いずれも『マグネットスイッチ』と呼ばれ、この2つの違いはサーマルリレーの有無です。

電磁接触器(サーマルリレーなし)

電磁接触器は、大電流にも耐えられる接点容量をもつ回路の開閉操作をおこなうリレーです。

基本的な構造はリレーと同じで、コイル、主接点3つ、補助接点(オプション)の3種類で構成されています。

上記の電磁接触器は三菱電機製のSD-T21という製品で、簡単な仕様は下記とおりです。

  • コイル
    • DC24V
  • 定格容量
    • AC200V級:4kW
    • AC400V級:7.5kW
  • 主接点
    • 3a
  • 補助接点
    • 2a2b

主接点は電動機などの運転用に使用し、補助接点は制御回路での状態取得に使用します。

電磁開閉器(サーマルリレーあり)

電磁開閉器は、電磁接触器にサーマルリレーがセットになったリレーです。

電磁接触器による回路の制御と、サーマルリレーによる過負荷遮断ができる優れもの。

サーマルリレーは負荷側の過電流を検知し、回路を遮断する回路保護機器です。

赤いツマミで設定した電流値を超えると、回路を遮断する仕組みになっています。

上記のサーマルリレーは三菱電機製のTH-T25KP ヒーター呼び15Aという製品で、簡単な仕様は下記のとおりです。

  • 保護タイプ
    • 過負荷・欠相保護形
  • 素子数
    • 3素子
  • ヒーター呼び
    • 基準15A(設定範囲12A~18A)
  • 補助接点
    • 1a1b

サーマルリレーについてもっと詳しく

電磁開閉器と電磁接触器の選定方法

ここでは主に電動機を負荷とした場合の、電磁開閉器と電磁接触器の選定方法について説明します。

選定の際に検討するべき項目は下記の5点です。

  • 電動機の回転方向
  • 負荷の定格容量
  • 接点の開閉回数
  • コイルの定格電圧
  • 補助接点の構成と有無
  • サーマルリレーの選定

負荷となる電動機のスペックは下記のとおりです。

定格出力22kW
定格電圧200V
定格周波数60Hz
極数6P
100%負荷時電流82.7A
始動電流508A
データ引用元:東芝プレミアムゴールドモートル

電磁開閉器を選定するにあたり、制御及び回路の条件は下記のとおりです。

制御及び回路の仕様
  • 電動機は正転でのみ使用
  • 主接点の開閉頻度は年間10,000回程度
  • 制御回路の定格電圧はAC100V
  • 補助接点は2a分を使用

電磁開閉器を選定していく手順は次の流れで進めていきます。

STEP
電動機の回転方向

電動機の回転方向をもとに、可逆式もしくは不可逆式かを選択します。

STEP
負荷の定格容量

負荷(今回の場合は電動機)の定格出力から、電磁開閉器のフレームサイズを絞ります。

STEP
接点の開閉回数

主接点の開閉頻度をもとに、定格容量で絞った電磁開閉器からフレームサイズを決定します。

STEP
コイルの定格電圧

電磁開閉器を操作するコイルの定格電圧を決定します。

STEP
補助接点の構成と有無

制御回路に必要な補助接点の数を決定します。

STEP
サーマルリレーの選定

負荷電流に応じたサーマルリレーの呼び(A)を決定します。

使用する電磁開閉器は、三菱電機製の電磁開閉器MS-T/Nシリーズから適用するものとします。

電動機の回転方向

電動機の回転方向が、片側一方だけなのか、正転および逆転する必要があるのかで選択する形式が異なります。

三菱電機製 非可逆式電磁接触器

三菱電機製 可逆式電磁接触器

  • 回転方向が決まっている場合
    • 非可逆式の電磁開閉器
  • 回転方向の切り替えが必要な場合
    • 可逆式の電磁開閉器

可逆式の電磁開閉器は、片方の電磁接触器に正相を入力、もう片方には逆相を入力し、コイルの制御で正転と逆転を操作します。

2つ同時にオンしないよう物理的なインターロックが施されているため、制御ミスをしても短絡することはありません。

今回の選定条件では、電動機は正転でのみ使用するため『不可逆式』を選択します。

負荷の定格容量

負荷の定格容量とは、電動機の場合は定格出力を指します。

まずは電動機の仕様をおさらいしましょう。

定格出力22kW
定格電圧200V
定格周波数60Hz
極数6P
100%負荷時電流82.7A
始動電流508A
データ引用元:東芝プレミアムゴールドモートル

電動機の定格出力がAC200Vで22kWなので、200V級で22kWに耐えられるフレームサイズの電磁開閉器を選定します。

三菱電機製の電磁開閉器MS-T/Nシリーズのカタログから、直入れ始動におけるモータ負荷への適用を見てみましょう。

定格電圧200V、定格出力22kWの電動機に適用できる電磁開閉器のフレームサイズは、

  • T100
  • N125
  • N150
  • N180
  • N220

上記の5種類であることがわかりました。

接点の開閉回数

定格容量から候補に上がった複数の電磁開閉器から、接点の開閉回数をつかって1つに絞ります。

上記の表のとおり、適切なフレームサイズを決めるには、主接点の開閉回数を計算しないといけません。

電磁接触器の耐用年数は10年なので、『1年あたりの開閉回数×10年』以上となる最小のフレームサイズを選びます。

開閉回数の計算は、制御方法や使用方法、使用頻度が大きく影響するので、設備のユーザーと相談してください。

今回の選定では、開閉頻度は年間10,000回前後であり10年で10万回ぐらいなので、フレームサイズは『T100』とします。

個人的な肌感覚では、100万回もあれば十分なことがほとんどです。

コイルの定格電圧

電磁開閉器のフレームサイズが決まったら、操作コイルの定格電圧を決めます。

操作コイルとは電磁開閉器の主接点および補助接点をオン/オフするための電磁石です。

形式によってコイルを操作用の定格電圧が決まっているため、制御回路の電圧仕様に合わせて選定してください。

操作コイルの定格電圧は電磁開閉器本体に書かれているので、配線する際に電圧が一致しているか必ずチェックしましょう。

この電磁接触器におけるコイルの定格電圧はAC200−240V(50/60Hz共用)

もし、定格と異なる電圧を印加してしまうと、

  • 電圧不足の場合、コイルが動作しない
  • 過電圧の場合、コイルが焼け付く

などの不具合を引き起こすため、コイルの定格電圧と印加する電圧の整合性チェックは必須です。

今回は、制御回路の定格電圧がAC100Vなので『コイルの定格電圧=AC100V』とします。

補助接点の有無

補助接点は、電磁開閉器の主接点よりも接点容量が小さい補助的な役割をもつ接点のことです。

主に制御用の回路に使用されます。

補助接点を利用する際は、必要数を設計段階できちんと洗い出しておきましょう。

電磁開閉器を手配したあとに制御回路を設計し、補助接点が足りないというトラブルを回避するためです。

どうしても標準の補助接点数では足りない場合は、追加補助接点オプションユニットを追加して増量できます。

引用元:三菱電機追加補助接点オプションユニット

UT-AX4補助接点4極(4aまたは2a2bまたは3a1b)
UT-AX2補助接点2極(2aまたは1a1bまたは2b)
UT-AX11補助接点2極(1a1b)
MS-Tシリーズ用の追加補助接点ユニット

追加補助接点を利用すると、コストアップとメンテ性の低下につながるため、標準の補助接点数に収める設計を心がけましょう。

今回、選定したT-100の補助接点は2a2bでa接点を2つを使用するため『標準の補助接点のみ』とします。

サーマルリレーの選定

電動機の過負荷による損傷防止のため、適切なサーマルリレーの呼びを選定します。

ヒータ呼びとはサーマルリレーの遮断能力のことで、設定したアンペア以上の電流が流れると回路を遮断します。

ブレーカーが電線の保護が目的なのに対して、サーマルリレーは負荷の保護が目的です。

モーター負荷への適用表を参照すると、モーター容量[kW]に対応したヒータ呼び[A]の値がわかります。

モーター容量22kWなので『ヒータ呼びは82A(調整範囲65A〜100A)』を選べばいいですね。

サーマルリレーについてもっと詳しく

22kWの電動機に対する適切な電磁開閉器の型式は…

22kWの電動機に対する電磁開閉器の型式は『MSO-T100 操作コイルAC100V ヒータ呼び82A』となります。

引用元:三菱電機 開放型電磁開閉器 形式記号の構成

形式の意味詳細
基本型式電磁開閉器の種類
非可逆・可逆可逆式か非可逆式の選択
フレームサイズ電磁接触器の開閉容量を選択
フィンガープロテクション配線用端子の種類と感電防止カバーの選択
サーマルリレーのリセット方式サーマルリレーがトリップした際の復帰方法を選択
組み合わせるサーマルリレーサーマルリレーの性能を選択
操作コイル・操作回路仕様操作コイルの特性を選択

基本形式とフレームサイズ以外のオプション形式は、多くの場合不要です。

基本的にはユーザーの設備仕様に合わせて、要不要を選択してください。

電動機を運転するなら電磁開閉器・電磁接触器の選定知識は必須です

この章のまとめ
  • 電磁接触器とは電動機などの出力が大きい機器を制御するリレー
  • 電磁接触器と電磁開閉器の違いはサーマルリレーの有無
  • 電磁開閉器は電動機の定格出力と主接点の開閉頻度でフレームサイズがきまる
  • 接点制御用のコイル仕様を決める際は、制御回路の定格電圧を確認する
  • 補助接点の点数が足りるかは、制御回路を設計後に確認する
  • サーマルリレーの型式と呼びは、電動機の定格出力できまる
  • その他オプションはユーザーの仕様に合わせて追加する

電動機などの出力が大きい負荷を運転する際には、電磁開閉器または電磁接触器の設置は必須です。

正しい選定ができないと、本体やコイルを焼損させたり動作しないなどの不具合を引き起こします。

小型のリレーとは異なり、負荷の定格容量ごとに選定が変わるため少しむずかしいかもしれません。

ですが、シーケンス制御のハード設計をおこなうなら、電磁開閉器の選定知識を必ず身につけておきましょう。

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