FANUCには主電源オフ時でも絶対位置検出器(APC)を電池を使って稼働させる、専用のアブソリュート(以下ABS)バッテリーが存在します。
絶対位置検出器への供給電源は、サーボアンプの状態で異なります。
- サーボアンプに電源が投入されている状態
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供給元の電源によって保持
絶対位置検出器は主電源によって稼働している - サーボアンプの電源が切れている状態
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ABSバッテリーによって保持
絶対位置検出器はABSバッテリーによって稼働している
絶対位置検出器への電源供給が断たれたとき、サーボアンプは現在位置を見失い、記憶していた機械原点と現在位置の関係がわからなくります。
正確な機械原点を割り出せなくなるため、オペレーターに機械原点復帰を要求する仕組みです。
装置の電源を切ったまま長期連休に入り、連休明けに立ち上げたら機械原点が消えていた…
このような話は、連休明け後にある問い合わせの中でも多いトラブルです。
そんなことになる前に、自分でバッテリーを交換してみませんか。
要点を押さえてこれから説明する手順通りに作業を行えば、とても簡単ですよ。
ABSバッテリーアラーム
アラームメッセージ
ABSバッテリーの電圧が危険な領域まで下がると、オペレータメッセージに「ABSバッテリ電圧低下」が表示されます。
いつ機械原点が消えてもおかしくない状態です。すぐにバッテリーの交換作業を行ってください。
準備するもの
単一アルカリ乾電池4本
単一のアルカリ乾電池4本を準備します。
パナソニックの単一電池4本セットを使えば、電池の余りが出ません。
安価な中国メーカーの電池は液漏れしやすく、電池不良による原点消失のリスクが高いため危険です。
FANUCが推奨する電池のスペックを載せておくので、選定する際の参考としてください。
メーカー | Panasonic |
型式 | LR20XWA/B |
電池サイズ | D(単一) |
出力電圧 | 1.5V |
保存可能期間 | 7年(容量80%以上) |
バッテリー交換方法
サーボアンプの電源を投入する
バッテリーを交換する前に電源を投入し、サーボアンプおよびCNC装置に電源を運転状態にします。
バッテリーケースの蓋を開ける(電源は入れたまま!)
マイナスドライバーで左右の止めねじを緩めます。
この時、ネジの山を潰さないように注意してください。
古い電池を抜く(電源は入れたまま!)
フタをはずしたら古い電池4本を取り外します。
新しい電池を取り付ける(電源は入れたまま!)
バッテリーケース内の挿入方向に従い、通り新しい電池を取り付けます。
電池の向きがわからなくなったら、次の図の通りに取り付けてください。
蓋を取り付ける(電源は入れたまま!)
フタには極性があります。交換前と同じ向きで取り付けてください。
しっかりと増し締めして、フタに緩みがないことを確認します。
CNC装置の電源を再投入する
電源を再投入してCNC装置を再起動してください。
メッセージを確認しアラームがないことを確認する
メッセージを開き、アラームが表示されていないことを確認したら作業完了です!
電池の交換に失敗し、機械原点が消えてしまった場合次のアラームが発生します。
機械原点の再設定方法は【FANUC】ファナックの機械原点設定(レファレンス点復帰)方法【パラメータ1815】を参照してください。
交換頻度
バッテリの基準電圧は6.4Vです。
使用期間に関わらず、電圧が6Vを下回ったら交換してください。
通常使用なら1年に1度
1週間に24時間以上稼働している設備なら、ABSバッテリの交換頻度は1年に1度くらいを目安に交換してください。
使用しない期間が長い場合は半年に1度
電源を切っている期間が長くなるほど、絶対位置検出器を電池で駆動する時間が長くなるので、消耗が激しくなります。
1週間に10時間程度しか稼働しない設備は、半年に1度バッテリを交換しましょう。
6V以下になったら交換。交換時は主電源を切らずに作業すること!
原点を消失させないために、必ずCNC装置の電源を入れた状態で作業を行ってください。
一度機械原点が消えると再設定に手間がかかりますし、以前と同じ原点を出せないために加工精度へ影響がでます。
間違った操作にて機械原点が消えてしまったときは、【FANUC】ファナックの機械原点設定(レファレンス点復帰)方法【パラメータ1815】 を参考に設定をおこなってください。
コメント
コメント一覧 (2件)
誤字
【誤】樹会原点が消えてもおかしくない状態です。
【正】機械原点が消えてもおかしくない状態です。
太田 敦 様
いつも電装制御屋の備忘録をご覧いただき、誠にありがとうございます。
ご指摘の誤字を修正しました。
コメントにてご連絡いただけましたことを感謝いたします。