【図解】スターデルタ回路をインバーター化する手順と注意点

スターデルタ回路からインバータ回路へ置き換えるのは比較的簡単です。

しかし理屈を理解しないまま適当に置き換えてしまうと、事故や災害を引き起こす可能性もあります。

逆を言えば置き換えの手順さえ把握しておけば、初心者でも置き換えは可能です。

ここではスターデルタ回路から三菱電機のインバータA800への置き換えを想定した場合の手順について詳しく説明します。

目次
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置き換える前のスターデルタ回路  

今回置き換え対象となるスターデルタ回路に使用されている部品は以下のとおりです。

名称機器符号型式メーカー
ブレーカーCBNF125-CV 極数3P 定格125A三菱電機
サーマルリレーTRTH-100 呼び82A(65~100A)
メイン電磁開閉器MCMS-T65
デルタ電磁開閉器MCDS-T65
スター電磁接触器MCSS-T25
中継端子台TBBN75WIDEC
電動機M6極 22kW 定格電流85.6A東芝
各制御機器の詳細

各区間の電線太さは以下のとおりで構成されています。

配線区間電線太さ
電源→NFBKIV 38sq
NFB→OL
OL→MS-MKIV 14sq
OL→MS-D
MS-M→端子台(UVW)
MS-D→端子台(YZX)
端子台(YZX)→MS-SKIV 5.5sq
MS-Sの一次側短絡電線
端子台(UVWYZX)→電動機
※電線管内に配線するものとする
KIV 22sq

ブレーカー

電動機の定格電流値が85.6Aなので、1.25倍の安全率を乗じると107A以上のブレーカーが必要です。

よって107Aより大きい定格で最小が125Aなので、 定格125AのNF125-CV 3Pを選定しました。

サーマルリレー

電動機の定格電流値が85.6Aなので、同じ値に電流値設定をできるTH-100 呼び82A(65~100A)を選定しました。

電磁接触器

スターデルタ回路で使用されている電磁接触器は以下の3種類です。

  • MS-M(メイン)
  • MS-D(デルタ)
  • MS-S(スター)

MS-M(メイン)とMS-D(デルタ)

メイン用とデルタ用の電磁接触器を選定する際は、負荷の定格に対して65%の電流値をもとにします。

電動機の定格電流が85.6Aなので、その65%は 55.64Aです。

AC-3級レベルの使用用途を想定した場合、AC200V〜220Vにて65Aまで定格使用電流をもつS-T65を選定しました。

MS-S(スター)

スター用の電磁接触器を選定する際は、負荷の定格に対して下記の計算で求められる電流値を参考にします。

スター回路に流れる電流(A) = 電動機の定格電流(A) × ( 1/3 × 1/√3 )

電動機の定格電流が85.6Aなので、スター結線時にスター回路に流れる電流は16.5Aです。

AC-3級レベルの使用用途を想定した場合、AC200V〜220Vにて20Aの定格使用電流をもつS-T20を選定しました。

中継端子台

中継端子台は電線の太さに合わせて選定します。

U,V,W,Y,Z,Xから電動機までの電線が22sqなので、適合電線が22sqに対応しているBN75Wを選定しました。

定格絶縁電圧AC/DC1000V
定格通電電流94A
適合電線22sq
ネジ端子M6
BN75Wのスペック(JIS定格)

インバーターへ置き換えた後の回路

スターデルタ回路をインバーター回路へ置き換えた際に必要となる部品は以下のとおりです。

流用可能部品

名称機器符号型式メーカー
ブレーカーCBNF125-CV 極数3P 定格125A三菱電機
中継端子台TBBN75WIDEC
電動機M6極 22kW 定格電流85.6A東芝
各制御機器の詳細

ブレーカー

インバーター化しても電動機の定格電流は変わらないため、ブレーカーはそのまま流用可能です。

中継端子台

デルタ結線で使用する電線6本をインバーターの2次側出力に流用します。

デルタ結線時とインバーター運転時の定格電流は同じなので、端子台もそのまま流用可能です。

追加・変更部品

名称機器符号型式メーカー
メイン電磁接触器MS-MS-T100三菱電機
インバーターINVFR-A820-22k-1三菱電機
各制御機器の詳細

メイン電磁接触器

スターデルタ回路からインバーター回路へ変更する際、必要な電磁接触器は1つだけです。

ただしスターデルタ回路で使用していた電磁接触器は3つとも流用不可。

インバーター化のために、AC-3級で定格使用電流が100AであるS-T100を追加します。

インバーター

インバーター回路の主役であるインバーターは容量で選定しないといけません。

電動機の容量が22kWなので、適用モーター容量が22kWのFR-A820-22k-1を追加します。

電線の流用可否

配線区間電線太さスターデルタ回路からの流用元
電源→NFBKIV 38sq電源→NFB
NFB→MS-MNFB→OL
MS-M→INV新規追加
INV(UVW)→端子台(UVW)KIV 14sqMS-M→端子台(UVW)
INV(UVW)→端子台(YZX)MS-D→端子台(YZX)
端子台(UVWYZX)→電動機
※電線管内に配線するものとする
KIV 22sq端子台(UVWYZX)→電動機
※そのまま流用可能

電源→NFB

大本の電源からブレーカーまでの電流は、スターデルタ回路とインバーター回路で変化はありません。

そのためKIV38sqの電線をそのまま流用可能です。

NFB→MS-M

ブレーカーから電磁接触器までの電流は定格85.6Aです。

そのためスターデルタ回路のブレーカーからサーマルリレーの電線を流用します。

内線規定(1335-9:電線の並列使用:勧告)では 銅線は50スケア、アルミ線80スケア以上でだけ認められています。 (同一の線種、断面積、長さであることと、接続方法も特別な規定があります)

インバーターの制御およびパラメーター設定

インバーターの電源回路

インバータ電源電磁接触器(MS-M)

スターデルタ回路ではモータ始動用に使用していた電磁開閉器。

インバータ回路ではインバータ電源用として使用し、メイン電源のオンとともに動作させます。

電磁開閉器をオンしてもモータが動作するわけではなく、あくまでもインバータの電源用です。

モータの回転開始はSTFへの入力によりおこないます。

インバーターの制御回路

インバーターの制御回路は上記の図の通り配線します。

使用する端子は以下の3つです。

  • PC:入力接点コモン
  • STF:モータ運転
  • RH:周波数設定

接点入力コモンDC24V電源(PC)

モータ運転(STF)、周波数設定(RH)等の入力信号用の電源は、インバーターのPC端子から取り出します。

引用元:三菱電機 汎用 インバータA800 取扱説明書(詳細編)制御ロジック(シンク/ソース)切換

制御ロジックをPNPとしたいので、インバーターのジャンパコネクタはSOURCEに取り付けてください。

モータ運転(STF)

モータ運転(STF)に入力をおこなうと、モータが回転し初めます。

制御にはスターデルタ回路でモータ運転条件に使用していた接点RYを流用可能です。

接点RYの1次側は端子PCから取得し、2次側を端子STFに入力してください。

周波数設定(RH)

周波数設定(RH)に入力をおこなうと、モータ運転時にパラメータNo.4で設定した値を目標周波数とします。

今回は常時周波数を固定して利用するため、端子RHには端子PCのDC24V電源を直接短絡すればOKです。

3速設定高速(RH)・3速設定中速(RM)・3速設定低速(RL)への入力を切り替えることで、複数の周波数を制御から変更できます。

インバーターのパラメータ設定

スターデルタ回路から三菱製インバータA800に置き換える場合、下記のパラメーターを設定します。

パラメータNo.名称設定値
3基底周波数(Hz)60
43速設定(高速)60
7加速時間1.0
8減速時間1.0
9電子サーマルモータ定格電流85.6

基底周波数

基底周波数は、接続先の電動機における定格周波数を設定します。

スターデルタ運転のとき電源の60Hzで運転していたため、基底周波数は60Hzに設定してください。

3速設定(高速)

3速設定とは、高速・中速・低速の3つを切り替えて運転中の周波数を変更する機能です。

今回は速度変更をおこなわないため、高速にのみPr.4「高速」に60Hzを設定してください。

加速時間、減速時間

  • 加速時間:停止状態から設定周波数に到達するまでの時間
  • 減速時間:運転状態から停止状態までに到達するまでの時間

適切な加減速時間はモータの用途次第であり、決まった設定値はありません。

今回のように22kWモータのスターデルタ回路からの置き換えであれば、5秒程度に設定すれば問題はないでしょう。

電子サーマルモータ定格電流

電子サーマルモータ定格電流とは、サーマルリレーの役割を代替する機能です。

設定値を上回る電流が流れると、インバーター側で過負荷アラームを発生させて運転を停止させます。

今回使用するモータは定格電流が85.6Aなので、設定値は85.6としてください。

インバーター回路完成図

動力回路

使用部品一覧

名称機器符号型式メーカー
ブレーカーCBNF125-CV 極数3P 定格125A三菱電機
中継端子台TBBN75WIDEC
電動機M6極 22kW 定格電流85.6A東芝
メイン電磁接触器MS-MS-T100 AC200V三菱電機
インバーターINVFR-A820-22k−1三菱電機

使用電線一覧

配線区間電線太さ
電源→NFBKIV 38sq
NFB→MS-M
MS-M→INV
INV(UVW)→端子台(UVW)KIV 14sq
INV(UVW)→端子台(YZX)
端子台(UVWYZX)→電動機
※電線管内に配線するものとする
KIV 22sq

インバーター電源回路

インバーター電源用の電磁接触器は、R相とS相から電源を取ります。

オンする条件は電源入のタイミング以外に、各々の安全仕様に沿ってアレンジしてください。

AC100V電源がある回路の場合は、コイル電圧がAC100Vの電磁接触器に置き換えても問題ありません。

インバーター制御回路

端子名用途
PCインバーターから生成されるDC24V電源 STF、RH用
STFモータを正転駆動させる指令
RHパラメータNo.3 で設定した周波数を目標に運転する指令

端子STFおよびRHの入力用電源は、端子PCから取り出します。

STFへの入力は接点RYを流用すること。RHはPCと短絡してください。

このとき、インバータの制御ロジックはSOURCEを選択しておくこと。

【番外編】PLCからの出力でインバータを制御する場合

PLCからの出力でインバータを制御する場合、外部DC24V電源を設置します。

制御ロジックがSOURCE(ソース)の場合

PLCの出力回路がPNPである場合、インバータの制御ロジックはSOURCE(ソース)となります。

このときPLCの出力回路で使用しているDC24V電源のマイナス側を、インバータのSD端子へ接続してください。

PLCからの出力信号はそのままSTFやRH等のインバーター側入力端子へ接続すればOKです。

制御ロジックがSINK(シンク)の場合

PLCの出力回路がNPNである場合、インバータの制御ロジックはSINK(シンク)となります。

このときPLCの出力回路で使用しているDC24V電源のプラス側を、インバータのPC端子へ接続してください。

PLCからの出力信号はそのままSTFやRH等のインバータ側入力端子へ接続すればOKです。

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