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シーケンス制御設計の仕事内容を現役エンジニアが解説

制御設計は電気回路および組み込みソフトウェアの設計を主たる業務とする仕事の総称です。FA(ファクトリーオートメーション)だと、工作機械や搬送・検査設備などの工場で省力化装置の制御を担当します。

求められる知識は電気(ハード)、シーケンス制御、ラダー言語の3つ。あとは各方面とのやり取りを円滑におこなえるだけのコミュニケーション力が必要です。

企業によっては電気回路設計のみ、ソフトウェアのみといった分業がなされている場合もあります。なので必ず上記の知識が必須だとは言えません。ですが、一般的には電気回路設計とソフトウェア設計を同時に担当することがほとんどです。場合によっては、設計だけでなく部品の手配、配線作業、現地での調整作業など業務範囲が広いこともあります。

なので、制御設計エンジニアの仕事内容は大体こんな流れです。

  • 仕様ぎめ
  • 設計(電気回路)
  • 部品手配
  • 設計(PLCソフト)
  • 配線、組み立て
  • PLCソフト調整
  • 立会、残件修正
  • 納入立ち上げ

どんな企業であっても、これらの全部または一部を担当するのが制御設計エンジニアの仕事。サービスエンジニアの今も、工作機械メーカーで働いていたときも、基本的にはこの流れに沿って業務を進めていました。

ここからは、FA系の制御設計エンジニアの場合について、各仕事内容の詳細を説明していきます。

目次

仕様決めから見積試算

受注前の段階では、客先の要望を具体化するところから始めます。これが仕様ぎめです。
先方が提出してくる仕様は、結果だけがほとんど。

  • 「Aという製品の特定箇所に穴加工する」
  • 「マシンタイムはxx秒以内」
  • 「納期は◯◯まで」

といった具合です。

場合によっては、安全回路だとかオプション機能だとかその他制約などの条件を提示してくる場合もあります。ですが、どれも結果の指示であって方法の指示はありません。

どうやって客先の仕様を実現するのか。コストと実現性を天秤にかけながら詳細を詰めていくのが、制御設計エンジニアの仕事です。

仕様ぎめ、見積試算の難しいところは「納期」「コスト」「実現性」のバランスを取るところ。コストに関しては最も客先が敏感に反応するため、最小最低限の手数で実現する算段をつけるのが腕の見せ所です。

こればかりは経験がモノを言うため、最初からできる人はいません。日々の業務の中でノウハウを蓄積していけば、いずれできるようになります。逆に、普段から何も考えず指示されたことだけをこなしている人は、この手のスキルは向上しません。

仕様ぎめでコケると、後々不具合の修正で工数がふえて赤字になります。見積試算も間違いがあると、適正な業務時間をかけても赤字になります。目立たない仕事ですが、任されるようになったら一人前です。

ハード設計(電気回路)

仕様が決まったら、ハード設計を本格的に進めます。進め方としては、だいたい次のとおりとなる場合が多いです。

  • 電気回路の設計
  • 部品の選定
  • 承認図提出
  • 指摘の修正

※承認がもらえるまで工程3〜4を繰り返す

電気回路の設計では、成り立てばOKというわけではありません。客先の安全仕様書に則って回路設計をおこないます。部品の選定も、メーカーや型式の指定などがある場合、同様に指示を守って選定しないといけません。

仕様に則ってひととおり設計が済んだら、客先へ承認図として設計図面を提出します。ここでフィードバックをもらいながら、修正〜提出を繰り返し、承認が降りればハード設計は終了です。

ハード設計の難しいところは、電気の知識が求められる点です。ソフト設計と違って、一度設計した回路をあとから変更するのは大変。カネも時間もヒトも必要で、たった少しのミスが後々大事に繋がる場合もあります。

ブレーカ容量、電線、始動、接点容量、トランス容量、PLCの選定…など、範囲が広いので、知識だけでなく経験やカンも求められます。これらをいきなり理解して実践できる人はいないので、どの会社でも狭い範囲から始めて徐々に全体を担当するという流れになるでしょう。

私も元は電気と全く関係のない学部を卒業しため、電気の知識は全くありませんでした。それでも地道に勉強した結果、ゼロからハード設計をおこなえるまで成長しました。

部品手配と納品チェック

ハード設計で承認がもらえたら部品手配を進めます。ここでは制御機器以外に、配線や機器取り付けなどで必要な小物部品と必要量を選定しないといけません。

部品手配で難しいのは消耗品や小物部品の選定

特にケーブルの手配は難しい部類です。たくさん買えば利益を圧迫するので、必要量を割り出して最小量を手配します。決め方は経験によるところが大きく、配線経路を頭の中で想定して、必要量を計算し最小ロットで手配するといった具合です。

他にも端子や結束バンドなどの消耗品の数量、電気機器接続用コネクタの数量、電線管の長さ選定など、配線作業を経験していないと適切に選定できない場面はたくさんあります。

この手の部品手配でヌケモレなく手配できるようになれば、一流の制御設計エンジニアと言えるでしょう。

製作部品は納品後のチェックまでが仕事

既製品の手配だけではなく、板金部品やハーネスといった製作部品を手配することもあります。

板金部品の最たる例は制御盤や操作盤ですね。大抵の場合、図面を書いたら制御盤メーカーなどに外注することがほとんどだと思います。

ハーネスも外注する場合は、図面を書いて見積もりをもらってから発注する流れです。

  • 図面提出、見積依頼
  • 見積回答
  • 発注
  • 修正やり取り
  • 納品
  • 納品後チェック

製作品を外注した場合、納品まではこのような経緯になると思います。

製作部品のあるあるとして、4番の修正やり取りで設計変更した内容を図面に反映し忘れること。これを忘れて図面を流用したとき同じミスが繰り返されます。相手方が気づいてくれればよいですが、そのまま製作されると合わないなんてことも。

また納品後のチェックも重要です。人によってはやらない場合もあるようですが、私は必ずチェックをおこないます。いざ使用するタイミングでミスが発覚しても、修正のクレームは出せないからです。こういった依頼は納品後◯◯日以内までは無償での対応という契約がほとんど。なので、納品後すぐにチェックするクセを付けておきましょう。

PLCプログラムの設計

ハード関係の設計が終わったら、ソフトウェアに着手しましょう。ここでは三菱製のPLCを用いたラダー言語の場合について話を進めていきます。

最初はデバイスの割り付けから決めていく

いきなりプログラムを書き始めることはしません。最初にデバイスの割り付けから始めていきます。

デバイスとは外部入出力のXやY、内部コイルのMやラッチのL、タイマーのT、データレジスタDのこと。

デバイスの割り付けを行わず、先頭から思いのままに割り付けていくと可読性の低いプログラムになってしまいます。そこで、機械の機能ごとに使用するデバイスの範囲を予約し、可読性を下げない工夫を盛り込みます。

用途MTD
搬送ステーションM0〜M99T0〜T49D0〜D9
3軸ロボットM100〜M199T50〜T99D10〜D29
アラームM200〜M299T100〜T149D30〜D49
表示器M300〜M399T200〜T299D50〜D99

このように用途ごとに使用するデバイスの範囲を割り付けておくと、検索した際に関連するデバイスも一目でわかります。後の自分のために、手間をかけてでも取り組むべき作業です。

サイクル線図を書いて機械の動作を視覚化しよう

次に機械の動作を理解しましょう。動作を視覚化する方法としてサイクル線図があります。

サイクル線図とは、各機器の動作を時間軸に沿って動作状態を記入したもの。動作順序がひと目で分かるため、動作を理解するのにもってこいです。

このサイクル線図は企業ごとに作る人が違う場合があり、機械設計が作る場合もあれば制御設計が担当する場合もあります。いずれにせよ制御設計エンジニアであれば、最低でもサイクル線図を読めるようにはなっておきたいところ。

ラダープログラムを書き始める前に、必ずサイクル線図を一読して構想を練っておきましょう。

実際にラダープログラムを書く

デバイスの予約、サイクルがわかったらラダープログラムを書き始めます。ラダープログラムを設計する順序はだいたい次のような流れです。

  • 各機能の各個運転回路
  • アラーム回路
  • 自動運転回路
  • 表示器、ランプなどの表示回路

まずは各機能の各個動作から設計を始めます。自動運転から着手しないのは、各個回路を自動回路の土台にするためです。自動回路は各個回路にあとから肉付けすれば実現できるので、各個回路から設計します。

各動作の回路を設計したらアラーム回路を作ります。動作ごとのタイムオーバーやセンサー異常など、動作上で想定される異常をピックアップしましょう。このとき自動運転に関するアラームは後回しです。

各個回路とアラーム回路が完成したら、自動運転回路の作成に移ります。やることとしては、各動作をサイクル線図通りに結んでいくだけ。シーケンス制御の名の通り、順序通り動く回路を作りましょう。

最後に表示関係を着手します。各個やアラーム、自動運転が完成してから表示関係の設計をおこなうとスムーズです。

最後にミスやモレがないか全体をひと通り確認してラダープログラムは完成です。

配線&組み立て

机上での作業が済んだら、ここからは実機に触れていきます。

まずは組み立てから。自分で設計した電気回路図をもとに制御盤、外部機器との接続をおこないます。

一口に配線・組み立てといっても求められる作業スキルは多岐にわたります。

  • 正しい圧着方法の知識
  • 整線スキル
  • 穴あけ、タップ立て

など、設計とは知識のベクトルが全く異なります。ですが配線・組み立ての経験があれば、ハード設計に活かせるようになるため、設計者であっても現場経験を積んでおくことはメリットしかありません。

とはいえ配線・組立作業は体力仕事なので、向き不向きがあるのも事実です。太い電線を這わせたり、機械の上に登って作業したりと力も必要なので、体力に自信がない人には相性が悪いかもしれません。

企業によっては設計者と電気組み立てで担当が別れているところもあるので、そういった場合は指示役に回るため、体力面がハンデになることはないでしょう。

配線もできる制御設計エンジニアは少数派なので、企業としては喉から手が出るほど欲しい人材です。また、現場を知っているからこそ作業者に優しい設計ができようになる点も強みです。

PLCソフト調整

さて、機械が組み上がったらプログラムをPLCに投入してデバッグを始めましょう。ここが一番楽しいタイミングでもあり、一番きついタイミングでもあります。

完璧に組み上げたと思ったプログラムであっても、やはりミスやモレは付き物です。デバッグを通じて洗い出しをおこない、修正をかけていきます。

デバッグをおこなう前にやっておくべきなのが、チェックシートの作成です。特にゼロから機械を立ち上げる場合、確認する項目は多岐にわたります。事前にチェックシートを作っておけば、作業モレ対策に役立つのです。

またチェックシートを作るメリットはもうひとつあります。PLCプログラムを作り終えたあとにチェックシートを作成しますが、プログラムの見直しに役立つんですよね。

プログラム作成中は想定していなかった動作パターンを、チェックシート作成のタイミングで思いつくことがあるからです。あえてプログラム作成後、数日の時間を開けてあげるとより効果的なので、機会があれば試してみてください。

PLCソフト調整は大変な作業であるがゆえ、準備次第では負担を大きく減らせます。もし調整作業で苦労していて「自分には向いていないんじゃないか…」と感じている人は、準備に力を入れるのがオススメです。

立会&残件修正

装置が完成したら、客先立会のもと最終チェックです。ここでは要望および仕様を満たしているか、お客様の目線でチェックが入るので、指摘があれば営業を含めて対応の可否を検討します。

私達制御設計エンジニアが立会で求められるのは、客先の指摘や質問に対しての技術的な説明です。

  • 「◯◯のインターロックってどうなっていますか?」
  • 「マシンタイムをもう少し短縮できませんか?」
  • 「◯◯したときアラームが発生しますか?復旧方法も教えて下さい。」
  • 「◯◯を検知するためにセンサーを追加できますか?」

など、質問は多岐にわたるので、相手が納得できる回答を返すのがエンジニアの役割です。

そのため、他の設備からコピペして切り貼りしただけの設計しかできない人だと、この立会のタイミングでボロが出ます。設計者である以上、自分の手掛けた仕事には責任を持たないといけないので、たとえコピペ回路であっても意図や動作について理解をしておきましょう。

指摘があれば修正し納入後立会へ

初回の立会が終わって指摘があれば、修正作業に入ります。

指摘の内容は軽微なものから重大なものまで様々で、時間がかかるものは納入後の対応となる場合もあります。基本的には、客先へ納入されるまでの間に対応を迫られることがほとんどです。

どうにかして指摘項目を減らしたいところですが、客先の一存で決まることなので、エンジニア側で対処できることは少ないです。どうやって要望を実現するかというやり方の面で、設計が楽になるよう提案するぐらいしかありません。

納入立ち上げ

機械が仕上がったら客先工場へ納入します。納入前の出荷準備としてバラシや養生などの作業を事前に行いますが、今回は省略。納入後の調整について解説します。

  • 設備の設置
  • 復元
  • 端子の増し締め
  • 絶縁抵抗の測定
  • 1次側電圧の測定
  • 電源投入
  • 試運転

納入から立ち上げまでの流れはこんな感じです。実際に制御設計エンジニアが関与する作業について説明していきます。

配線の復元

設備の規模によっては輸送トラックに乗り切らないため、ユニットごとに分解して発送します。配線の復元は、バラバラになって運ばれてきた設備の配線を元通りに復元する作業のことです。

設計者の腕の見せ所は、この分解復旧を見据えた設計をおこなうところ。簡単に分解できて、復元できる設計にしておくことで、現地での復元作業の手間を減らせます。逆に設計が悪いと、分解復元でかなりの時間をロスしてしまうので、設計の良し悪しが復元作業の時間を決めるのです。

端子の増し締め

ネジを使用している端子は、輸送中の振動で緩みます。なので設備を指定の場所に設置したら、ドライバーでネジを増し締めし、赤マーカーでチェックをしないといけません。

直流電源で動作する低圧機器なら、端子の緩みで引き起こされる影響は軽微です。ですがAC200Vや400Vなどで駆動する機器の端子が緩んでいると、電線の焼損から火災に発展します。

電線が抜けていないかをチェックするだけでなく、事故を防ぐために、納入後に改めて端子の増し締めをおこないましょう。

絶縁抵抗の測定

配線の復元が終わったら絶縁抵抗を測定します。絶縁抵抗とは電気機器の絶縁性を示すもので、単位はMΩ(メガオーム)です。電動機など交流電源を要する機器の絶縁を測定し、安全性をチェックします。

絶縁をチェックしないまま電源を投入し、漏電で動作しないなんてことは避けたいところ。事前に絶縁抵抗を測っておけば、問題のある箇所を電源投入前に潰せるので、忘れずに実施しましょう。

一次側電源の測定

電源を投入してみたら、機器が性能通り動作しない。そんなときは一次側電源に問題がある場合もあります。

測定してみたら電圧が不安定だったり、そもそも指定電圧と違ったり、周波数が違ったり。一次側電源に問題がないことを先にチェックしておくと、不要なトラブルを避けされます。

日本国内で一次側電源に問題があることは稀です。海外だと送電品質が低く、一次側の問題で機械が動かないこともあります。

電源投入&試運転

ハード的なチェックが済んだら、電源を投入して試運転をおこないます。

電源を入れたら、まずは各個操作にてすべての動作が想定通り動くか確認しましょう。ここで何かしら問題があれば、原因調査から修正に入ります。

各個操作が問題なく動くことを確認できたら、自動運転を実施しましょう。

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2025年11月3日更新

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