制御設計の仕事をしていると「将来性が無いのではないか」といったネガティブな意見を耳にします。
とくにシーケンスを扱う制御設計エンジニアを検討している人にとって、将来性は重要ではないでしょうか。
エンジニアを14年、採用活動を4年やってきた山本の結論は…
需要増加+人材不足なのでまだまだ将来有望な仕事です。
このページでは制御設計エンジニアが食いっぱぐれない理由、将来性がある理由について深掘りしていきます。
- 「人手不足」「若年層のものづくり離れ」が深刻なので市場が飽和しない
- 転職に強いスキルが身につくので年収をアップさせやすい
- PLCを使ったシーケンス制御に置き換わる技術はないため、将来性を悲観する必要がない
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など、転職で年収を上げたい方へ向けて情報発信をおこなっています。
制御設計を新卒から始めて14年経過しました。採用も4年担当しており、転職者側と採用側の経験を活かして皆様の転職に役立つ情報を発信しています。
制御設計エンジニアが食いっぱぐれない3つの理由
制御設計エンジニアは食いっぱぐれません。しかも競合相手がほとんどおらず、ブルーオーシャンの職種です。
- 制御設計エンジニアは常に人手不足
- 若年層のモノづくり離れ
- 転職先が豊富かつ年収も高い
理由①:制御設計エンジニアは常に人手不足
私が10年前に制御設計エンジニアになったときから人材不足は顕著でした。
2024年になっても人手不足は解消されていないどころか、人材は減少の一途を辿っています。
特にPLCを扱える人材は減っていますね。その理由はPLC技術者が不足している現状と転職需要についてで解説しています。
なぜこれほど人が集まらないのか。その理由は次にあると考えています。
制御設計業界がニッチすぎる
まず、制御設計業界の認知度は低いと言わざるを得ません。
学業として制御設計をメインに扱う学生がおらず、新卒から制御設計エンジニアを目指す人がいないから。
以下のツイートは、制御設計やシーケンス制御に関する機電系の認知度について意見を募集したときのものです。
アラサーですが、工業高校の授業でシーケンス制御として合計4コマやりました。
スタートスイッチ、コンベア、ワークセンサくらいの規模だったかと。
大学、大学院では全く触れませんでした
引用元:https://twitter.com/sam_industry/status/1532605066821382144?s=20
実際、学生時代に制御設計をメインに学ぶ人はいません。
そのため、シーケンスに関する制御設計は未経験からスタートする人が多い業界です。
中途で制御設計を志す人がほとんどなので、未経験の方でもチャンスのある仕事だと言えます。
シーケンス制御を学んだ人や資格がある人しかできないと勘違いされている
他部署のメンバーをスカウトした際に、全員が口をそろえて以下のように返答しました。
シーケンス制御を勉強したことがないから無理
制御設計はシーケンスを学んだ人しできないのでしょうか?
実はシーケンス制御の知識や資格がなくても、制御設計エンジニアになれます。
制御設計エンジニアは電気を扱う仕事ですが、資格は必要ありません。
資格なしでも始められるのが制御設計エンジニアのメリットです。
とはいえ、安全に業務を遂行するのに必要な特別教育の受講は求められます。
電気は取り扱いを間違うと大惨事を引き起こす危険な存在です。
安全上、知識があるに越したことはありません。それでも、知識ゼロから電気についても学んでいく人がほとんどです。
制御設計業界の情報が少ない
制御設計業界の情報はほとんど流通していません。
メーカーや協会などが統計や論文を出していますが、しっかりと読んだことのある方は少ないのではないでしょうか。
とくに給料や仕事内容といった、一線で働いている人の情報はほとんどないと言っても過言ではありません。
最近では業界内の情報をブログで発信する人も増えてきたのもあり、昔よりは情報を集めやすくなりました。
それでも機械設計といったメジャーな職種とくらべて情報発信者が少ないのが現状。
さらに問題なのが、技術系の解説ばかりで業界の事情について書く人が少ない点です。
制御設計の仕事や給料、転職市場について知りたい場合、本当に情報がありません。
そもそも制御設計者の人口が少なく、さらに情報発信までする人はごく少数です。
人手不足が情報不足を引き起こすといった、負のスパイラルが新規参入を敬遠させる原因となっています。
制御設計業界の情報について、当サイトが情報発信の役割を担っています。トップページに情報関係のリンクをまとめてあるので、ぜひご覧ください。
理由②:若年層のモノづくり離れ
制御設計エンジニアが食いっぱぐれない理由の一つに、若年層の製造業離れが関係しています。
ものづくりに関わる若年層の労働人口は、2,000年以降右肩下がりです。
「きつい」「汚い」「危険」の代表でもある製造業は、若年層にとって魅力がなくなったことが原因だと思われます。
しかし、人気がないということは新規参入のチャンスでもあるということです。
- 工場の自動化で仕事が増える
- 機械の保守、改造の仕事が増える
工場の自動化で仕事が増える
製造業の人気が右肩下がりであり人材確保の難しい状況において、どの工場でも自動化は急務です。
これから先も製造業に従事する人材が減ることを考えれば、工場の自動化はこれから先のトレンドといえます。
製造業の景気を測る指標である工作機械受注統計を見てみましょう。
2020年のコロナショックを除き、機械の受注数は緩やかに増加しています。
製造業の従事者は減少しているのに対し、工作機械の需要は増えているということです。
そもそも日本社会が少子高齢化というトレンドに突入していることも、製造業の人材不足を加速させています。
つまり今後は一層工場の自動化が加速していくということです。
工場の自動化が進めば、制御設計エンジニアの仕事も増えるということ。
そのため、今後の需要は右肩上がりに伸びていくことが簡単に予想できます。
機械の保守・メンテナンス需要が増える
制御設計のスキルは、保全やサービスエンジニアにも需要があります。
工場の自動化が進めば、設備を停めないための保守が必要だからです。
純粋な制御設計職とは違い、保全業務やサービスエンジニアはトラブルへの対応力が求められます。
適切な対応を施すには、制御設計のスキルが求められることが多いのが現状。
よって、どの会社でも制御設計のスキルは歓迎要件になっているのです。
工場の自動化が進む以上、保全マンやサービスエンジニアの需要は右肩上がりに増えていきます。
そのため、制御設計のスキルを持っていれば、働き口で悩むことは無いということです。
理由③:転職先が豊富で年収も高い
制御設計エンジニアは人手不足が続いており、どの会社も人材確保に躍起です。
そのため、年中求人が豊富に出ており、求人の平均年収は540万円と高額になっています。
- 幅広い職種に仕事がある
- 業種が豊富なので興味のある職を見つけやすい
- 人手不足&需要が多いため年収は年々上がっている
幅広い職種に仕事がある
制御設計エンジニアの仕事は、新しい設備を作るだけではありません。
- 新規設備の設計
- 設備保全
- サービスエンジニア
- フリーランス
- 情報発信者
『機械の保守・メンテナンスが増える』で説明したとおり、制御設計のスキルは設計以外でも需要が豊富。
保守やサービスに携わる仕事でも役立つため、非常に汎用性の高いスキルです。
また、制御設計を極めればフリーランスで働くことも可能です。私も仕事で様々なフリーランスの方に出会ってきました。
会社に縛られて働きたくない方や、より稼ぐためというのが理由とのこと。
さらに情報発信者として、本業とプラスして稼ぐことも可能です。
当サイトのように制御設計の業界情報を発信したり、技術的な情報を発信することで、広告から収益を得られます。
具体的なやり方は制御設計エンジニアが副業で月1万円稼ぐ方法にて公開中です。
業種が豊富なので興味のある職を見つけやすい
制御設計のスキルを活かせる仕事は、工作機械などの身近な製造メーカーだけではありません。
分類 | 用途例 |
---|---|
設備監視・制御 | プラント(上下水道・水処理・ゴミ処理)、ビル監視システム、受変電設備監視システム、植物工場等 |
ライン制御 | 自動車組立てライン・塗装ライン、鉄鋼圧延ライン・連続鋳造ライン、各種試験ライン等 |
搬送設備・運搬機械 | クレーン、コンベア、エレベータ、駐車装置、立体自動倉庫装置、新交通システム、トンネル換気設備等 |
製紙・印刷機械 | 抄紙機、ワインダ、スリッタ、製本機械、印刷機械、新聞輪転機等 |
繊維機械 | 紡糸機、仮より機、延伸ねん糸機、織機、編組機、染色仕上機等 |
食品・包装機械 | 製パン機、製菓機、製茶機、製麺機、精米麦機、製粉機、ミキサー、スライサ、内装機、荷造り機、外装機、ラップ包装機、飲食物包装機等 |
半導体・液晶製造装置 | ウェハー製造装置、ステッパ、洗浄装置、PI印刷装置、ラッピング装置、シール塗布装置、OLB装置、検査装置等 |
生活関連 | 業務用洗濯機、洗車機、ホームエレベータ、保安・防災機器、介護機器等 |
アミューズメント機器 | 舞台装置、遊戯装置、バッティングマシーン、ゲーム機器、ゴルフ練習機等 |
環境関連 | 大気汚染防止装置、廃棄物処理・リサイクル装置、省エネ関連機器、風力発電、太陽光発電、電力貯蔵設備、海水淡水化設備等 |
遊園地のジェットコースターなども、よく見るとシーケンス制御が利用されています。
飛行機に搭乗する際の通路となるパッセンジャーボーディングブリッジもシーケンス制御です。
意外と皆が知らないところで制御設計エンジニアが活躍できる場所があるのです。
制御設計のスキルを身につければ、ありとあらゆる業界へ転職できます。
あなたが興味を持てる業界を選ぶもよし、成長している業界を選ぶもよし。
とにかく仕事を見つけやすいのが制御設計エンジニアの特徴です。
人手不足&需要が多いため年収も年々上がっている
制御設計エンジニアは人手不足かつ需要が高いため、数ある製造系職種の中でもかなり高年収の部類に入ります。
2024年1月現在の制御設計求人から統計データを取ったところ、求人の平均年収は555.6万円であることがわかりました。
2023年は540.12万円だったので、たったの1年で15万円ほどの賃上げが進んでいるようです。
2023年ごろからのインフレにより、各社ともに大幅な賃上げを実施していることがデータからわかりますね。
ただし、どんな会社でも年収が高いわけではありません。
ちゃんと売上があって賃上げできるだけの体力がある会社という前提です。
少なくとも2023年時点の昇給で1万円以上増えてなければ、今いる会社には将来性がないと言えるでしょう。
PLCを使ったシーケンス制御に置き換わる技術はない
シーケンス制御で必ず使われるプログラマブルロジックコントローラ(以下、PLC)。
2024年現在においてもまだまだ現役です。
2020年に入ってから、生産現場でもIoTやトレーサビリティがトレンドとなりつつあります。
生産データを処理するため、Raspberry Pi(ラズパイ)のような産業用PCが多く利用されるようになりました。
多少の制御なら産業用PCで十分に賄えてしまうほどです。
こう聞くと「PLCは産業用PCに置き換わってしまうのではないか」と考える人もいるかもしれません。
でも安心してください。
産業用PCとPLCは棲み分けがなされており、以下の理由から産業用PCに置き換えられることはないといえます。
- 実績が多く導入リスクが低い
- コストの面で置き換えが難しい
- PLCが時代に合わせて進化している
実績が多く導入リスクが低い
PLC出荷規模の推移を見ると、合計出荷台数は年々増加の傾向にあります。
PLCが登場して60年あまり。2023年現在においても、ほとんどの設備に対してPLCが導入されています。
なぜ今でもPLCが当たり前のように採用されているのか?
その理由は、企業は導入リスクを下げることに重点を置いているからです。
設備には高い保守性が求められるため、一般化された枯れた技術で構成されます。
新しい技術を導入する保守性の悪さを解決するためです。
故障時にメーカーを呼ばないと直せない、教育コストが高い、といった技術は嫌われます。
実績のある技術で作れば、自社保全で対応できるし教育コストも低く抑えられるのです。
安心して導入できるPLCを使ったシーケンス制御が求められている限り、廃れることはありません。
コストの面で置き換えが難しい
PLCを置き換えるための技術が開発されていますが、コスト面でPLCに勝てないのが現状です。
産業用PCで機械を制御するのはコストが高すぎます。機械の制御においてPLCの安さには勝てません。
日本電気工業会の2020年度PLCユーザ調査報告書によると、ユーザーがPLCに求めるものに価格が挙げられます。
単純な入出力だけで構成する機械であればPLCで十分です。
小規模から中規模の設備なら、30万円ほどでPLCが手に入ります。
IoTやトレーサビリティであれば、小規模の産業用PCを追加して連携させるだけで問題ありません。
自動車系の会社では、数千万円規模の設備を年間数百台と導入しています。
そのため、設備導入には低コストがマストです。
よって安価で実績のあるPLCを使ったシーケンス制御が使い続けられています。
PLCが時代にあわせて進化している
産業用PCが設備制御の主流にならない理由は、PLCの進化にあります。
たとえば三菱電機製のPLC。C言語インテリジェントユニットを利用して、産業用PCと同等のデータ処理が可能です。
C言語だけでなくLinuxやPythonも利用したデータ分析がおこなえます。
PLC単体で制御からデータ分析、ネットワーク通信ができるため、コスト低減にも寄与しています。
流行りのデジタルトランスフォーメーションもトレーサビリティも、産業用PCの出番はなく、PLCひとつで十分なのです。
トレンドが変わるたびにPLCも進化しています。
メーカーの努力があるからこそPLCの優位性は維持され、他の技術に置き換えるられることはありません。
ただし制御設計の仕事は難しいところもある
需要があって食いっぱぐれない仕事となれば、制御設計エンジニアを目指すメリットは大きいと思っています。
しかし次のことを覚悟しておかないと、制御設計エンジニアを続けるのは難しいでしょう。
- 納期のプレッシャーと戦うこと
- 知識をアップデートし続けること
- 範囲外の分野を学ぶ熱心さを持つこと
①納期のプレッシャーと戦うこと
制御設計エンジニアは、納期という強いプレッシャーを背負って働く仕事です。
与えられた時間内に何がなんでもやりきれる人でないと、制御設計エンジニアになるのは難しいでしょう。
担当する設備で納期遅延を起こせば、客先だけではなく、他のメーカーにも多大な迷惑がかかります。
制御設計エンジニアは実力がすべての仕事です。
決まった納期までに機械を仕上げるスキルが求められます。
製造業において、納期遅延は最悪の不手際です。
②知識をアップデートし続けること
制御設計エンジニアは常に知識のアップデートが必要です。
エンジニアに求められる技術は日々変化しており、ネットワークの領域まで広がりつつあります。
PLCのIoT対応化に伴い、機械学習に強いPythonに対応した製品も登場しました。
ネットワークの知識だけでなく、コンピュータプログラミングが必須となっている時代です。
ハード回路を設計できる、ラダー言語を扱える以外にも、スキルに付加価値が求められています。
基本がわかれば食っていける時代は終わりました。
今は知識をアップデートし続けられる人だけが生き残れる世界です。
制御設計業界ではプログラミング経験者の人材価値が高まっています。
③範囲外の分野も学ぶ熱心さを持つこと
機械構造やロボットなどの分野についても勉強してください。
ハード回路やラダー言語などのシーケンス制御に関する知識だけでは、機械を思った通りに制御するのは難しいからです。
動作ひとつにおいても、動力源が違えばベストな制御方法は変わります。
同じシリンダでも気圧か油圧かで制御方法を変えないといけません。
たとえば、動作端の確認に必要なタイマー設定が変わるからです。
制御以外の分野も学ぶ姿勢が制御設計エンジニアには必須。
制御設計だけに特化している人で、優秀なエンジニアはいません。
制御設計エンジニアを続けていると、多種多様な知識が身につきます。
需要はあるのに人材不足で制御設計エンジニアはブルーオーシャン
制御設計エンジニアに将来性があるといえる理由は以下のとおりです。
- PLCが他に取って代わられることはない
- 製造業にかかわる人材の不足
- 他業種・多職種でスキルを活かせる仕事がある
少子高齢化や若者の製造業離れにより、人材不足が深刻な制御設計エンジニア。
その解決方法として、設備の自動化が進んでより制御設計エンジニアの需要と重要性が高まっています。
将来的にもエンジニアを欲している企業が減ることはありません。
むしろ増えていくと予想されます。
そのため経験者だけでなく、未経験者でもウェルカムな環境が整っている状態です。
この先、制御設計エンジニアが食いっぱぐれてしまうことないですし、スキルを身につければ、より稼ぐこともできます。
この根拠は、転職エージェントごとの求人年収を見てもらえればすぐにわかります。
求人数の多さと提示年収の高さが、制御設計エンジニアの需要の高さを証明してくれるでしょう。